電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21008

タイトル(和文)

光学振動計測技術を用いた電柱の振動姿態の可視化

タイトル(英文)

Visualizing Vibration Modes of a Utility Pole by Optical Vibration Sensing

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
国内の一般送配電事業者・通信事業者が管理する配電柱および電信柱(以下電柱)は約3600万本あり、各事業者はその状態に応じて更新や補強を行っている。構造力学分野において構造物の強度変化は外力に対する応答特性(変位・振動)に現れるとされ、特に局所的な損傷の影響は振動姿態注1)に現れることが知られている。しかし一般に振動姿態の計測には空間的に密なセンサ設置が必要であるため、膨大な数の既設電柱に適用することは技術と費用の面から従来不可能であった。これに対し、近年、カメラで撮影した動画を使い、構造物の変位や振動姿態を簡便に計測し可視化できる光学振動計測技術が開発されている[1][2]。本技術を用いれば巡視等の際に容易に電柱の柱体(本体)の振動姿態を計測できるだけでなく、柱上設備の装着状態まで対象を広げた検査ができる可能性がある。しかし、本技術を電柱などの配電設備計測に適用した例はほとんど無く、柱体や柱上設備の振動姿態を可視化できるかどうかは確認されていない。
目  的
光学振動計測技術を用いて電柱柱体や柱上設備の振動姿態を可視化できるかを調査し、実現可能性を明らかにする。
主な成果
1. 電柱柱体の振動姿態の可視化
電柱柱体の振動姿態の計測実験用に、2800-6300万画素で1秒間に75-160枚の画像を撮影できるシネマカメラと、830万画素で1秒間に約30枚の画像を撮影できるスマートフォンを準備した。両撮影機器を三脚で固定し、屋外の試験用電柱注2)を風速5-10 m/sの時に撮影した。撮影画像に光学振動計測技術を適用して振動を1000-10000倍に強調した結果、1.1 Hzで架線方向、1.5 Hzで架線直角方向の振動姿態が可視化できた(図1)。ただし、手持ち撮影時や風速が小さい場合(4 m/s以下)、弁別可能な形での可視化が難しいことも分かった。以上の結果から電柱柱体の振動姿態の可視化の実現可能性が確認できた。
2. 柱上設備の振動姿態の可視化
柱上設備の振動姿態をとらえるため、高解像度撮影ができるシネマカメラを三脚固定し、試験用電柱全体を高解像度(2800万画素以上)で撮影した。撮影画像に光学振動計測技術を適用した結果、柱体と柱上変圧器で異なる振幅特性が得られ(図2(a)(b))、8.8 Hzにおいて両者が異なる振動姿態を示す様子が可視化できた(図2(c))。以上の結果から柱上設備の振動姿態の可視化の実現可能性が確認できた。
今後の展開
今後、安定・頑健な計測精度を得るための条件や適用可能範囲を明らかにする。さらに、本手法を様々な状態の電柱に適用し、季節(気温)や電線の接続状態・張力、電柱の強度や耐力による振動への影響を分析する。


図1 風速10 m/s時の電柱柱体の振動姿態を光学振動計測技術により強調可視化した例


図2 風速10 m/s時の柱上設備の振動姿態を光学振動計測技術により強調可視化した例
参考文献
[1] 高田巡, 太田雅彦. インフラ構造物の振動・変形を可視化する光学振動計測技術の開発. ビジョン技術の実利用ワークショップ. 2019, IS1-C2.
[2] 高田巡, 伊藤雅彦. カメラによる振動計測法の発電設備への適用性検証―水車発電機振動の試験計測―.電力中央研究所報告 C20013, 2021.

概要 (英文)

The dynamic behavior of utility poles, such as vibration and displacement, can provide a lot of information about their structural strength. For this reason, various methods for sensing and simulating the dynamic behavior of utility poles have been developed. However, in order to obtain detailed information on the natural vibration modes of actual poles, it is conventionally required to install multiple contact-type sensors on the poles, which is difficult to apply to a huge number of existing poles in the field. Optical vibration sensing technology, which enables a remote and non-contact vibration measurement and visualization only by video cam, is expected to greatly facilitate the analysis of vibration modes on existing poles. In order to evaluate this technology, we conducted a test analysis to visualize the vibration modes of an experimental utility pole under natural wind conditions (wind speed of 4-10 m/s). The results implied that the vibration modes of the pole in the direction of the overhead wires and the direction perpendicular to the overhead wires could be visualized at 1.1 Hz and 1.5 Hz, respectively, from the footage of the pole taken by a video cam or a smartphone fixed on a tripod. Moreover, the results also implied that the vibration mode of the transformer on the pole could be visualized at 8.8 Hz when the footage was taken with sufficient resolution (over 28 megapixels). We will further expand the verification to clarify the range of applicability of this technology which covers sufficient accuracy, and also apply this technology to poles in various states to examine whether it can detect changes in strength and stability of poles.

報告書年度

2021

発行年月

2022/06

報告者

担当氏名所属

高田 巡

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

キーワード

和文英文
電柱 Utility pole
劣化診断 Deterioration diagnosis
振動姿態 Vibration mode
動画像処理 Video processing
光学振動計測 Optical vibration sensing
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