電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21016

タイトル(和文)

住宅のエネルギーに関するレジリエンス性向上のための調査 -自然災害による長期停電時の困りごとの把握-

タイトル(英文)

Research to improve the energy resilience of homes -Troubles during long-term power outages due to natural disasters-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
カーボンニュートラル実現に向け電化率上昇が見込まれる中、自然災害による停電リスクを考慮した住宅のエネルギーに関するレジリエンス性向上が必要である。このためには、停電時の困りごとや停電による意識変化といった実態把握が不可欠である。しかし、被災状況が異なる様々な災害種別に対し、広範囲を調査した例は見当たらない。
目  的
直近 6 年以内の大規模な自然災害注 1)による長期停電経験者注 2)を対象に、Webアンケートとインタビューを行い、長期停電時の困りごとや、レジリエンス性に関わる設備注 3)に対する意識等を調査し、現状の課題を整理する。
主な成果
1. 長期停電時の困りごと調査
a) アンケート調査結果(574名):全災害種別において、冷蔵庫・冷凍庫に関する困りごとが最も多く、照明、給湯、テレビ・ラジオ等が上位に並んだ。また、台風時にエアコンを困りごととする回答が地震に比べて多かったが、この要因として、災害が発生した地域(寒冷地と温暖地)や時期(夏期と中間期)の違いが影響したと推察される(図 1)。
b) インタビュー調査結果(38 名):主な困りごととその選択理由の回答を整理した(表1)。選択理由として、冷蔵庫・冷凍庫は食材の傷み、エアコンは熱中症等の健康不安が挙げられた。また、エコキュートからお湯を取り出した例があった一方で、取り出せることを知らず、情報不足により設備を活用できていない場合もあった。
2.困りごとの整理と今後の課題
調査結果に基づき、困りごとを「不快」、「不安」、「不便」の 3 つに分類し、家電機器等との関連性を整理した(図 2)。また、設備に関する回答結果から、図2に示した家電機器を停電時にも活用できることや、停電時に必要な給電設備(蓄電池や発電機)が望まれていることが示された。しかし、給電設備を購入するか否かは、費用対効果を重視していることも明らかとなった。さらに、各家庭のライフスタイルに応じた家電機器や給電設備、それらの利用に関する情報提供が重要であることが示された。
今後の展開
引き続き、困りごとや設備機器の調査を行い、停電時の困りごとの解消に必要な情報提供のあり方や、給電設備を含めた住宅のレジリエンス性を評価する手法を検討する。

注1) 地震 : 熊本地震(2016.4)・北海道胆振東部地震(2018.9)/台風 : 台風21号・24号(2018.9)・台風15号・19号(2019.9・10)
雪害 : 新潟雪害(2020.12)、北陸雪害・秋田雪害(2021.1)、その他雪害(6年以内)雪害インタビューは秋田雪害のみ
注2) 24時間以上(一部12時間以上)の長期停電経験者とし、オール電化住宅と電気ガス併用住宅を同程度とした。
注3) 太陽光パネル発電、蓄電池、発電機、電気自動車等、オール電化住宅の意識等について回答を得た。

概要 (英文)

As the electrification rate is expected to increase toward carbon neutrality, it is necessary to improve the energy resilience of homes, taking into account the risk of power outages due to natural disasters. In order to achieve this, it is essential to understand the actual conditions, such as problems that occur during power outages and changes in awareness due to power outages.
So we conducted the questionnaire and interview. The main results are as follows: Subjects (38 interviewees and 574 questionnaires) who experienced long-term power outages due to disasters (earthquakes, typhoons, snow damage) were asked their problems in the long-term power outages. Most of the subjects chose refrigerators/freezers, lighting, hot water supply etc. The reason for the selection of problems was the damage to foodstuffs in refrigerators and freezers, and health concerns such as heat stroke in air conditioners. On the other hand, the responses on equipment indicated that, from the standpoint of cost-effectiveness, equipment that can be used not only during emergencies but also during normal times and that can ensure sufficient rated output during power outages is desired. In addition, it was shown that it is important to provide information on home appliances and power supply equipment and their use according to each household's lifestyle.

報告書年度

2021

発行年月

2022/06

報告者

担当氏名所属

安岡 絢子

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

向井 登志広

社会経済研究所

上野 剛

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

宮永 俊之

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

キーワード

和文英文
住宅レジリエンス性 Resilience of homes
長期停電 Long-term power outage
困りごと Problem
アンケート Questionnaire
インタビュー Interview
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