電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21019

タイトル(和文)

インバータ主体系統における単独運転検出機能の不要動作に関する基礎検討-基幹系統で三相地絡事故が発生した場合-

タイトル(英文)

Fundamental Study on Unwated Operation of Anti-islanding Protection Relay in Inverter-dominated Power System - In Case of Three-phase Ground Fault in Bulk Power System -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
我が国の系統連系規程では,事故時運転継続(FRT:Fault Ride Through)要件の一部としてステップ状およびランプ状の周波数変動耐量が定められており1),PCS(Power Conditioning Subsystem)の単独運転検出機能はそれらの耐量を満足するように設計されている。このFRT要件は,基幹系統における三相地絡事故時のシミュレーション解析2)等に基づき策定されたものである。一方,当時とは再生可能エネルギー(再エネ)導入拡大の見通しも変化しつつあるため,将来想定を見直したデータを用いて,単独運転検出機能の不要動作リスクを把握する必要がある。
目  的
Y法シミュレーションにより,将来的なインバータ主体系統において,現状のFRT要件を満足するPCSの単独運転検出機能が三相地絡事故時に不要動作する可能性について検討する。また,当所の電力系統シミュレータにおいて実機FRT対応PCSを用いた検証試験も併せて実施し,将来的なリスク低減に向けて必要な取り組みを提言する。
主な成果
1. 三相地絡事故時のFRT対応PCSの不要動作に関するY法シミュレーション
電気学会WEST10機系統モデルをベースに,2030年を想定3)して再エネ比率を増加させたインバータ主体系統(図1)を作成し,三相地絡事故時における周波数を分析した。その結果,並列する同期発電機の減少などによって電圧低下が大きくなるほど,事故中の周波数偏差が拡大することを明らかとした(図2)。また,FRT要件の周波数変動耐量を満足するように設定4)した10種類のY法用単独運転検出機能モデルの動作を分析した結果,構成パラメータ次第では,不要動作のリスクがあることを明らかとした(表1)。
2. 電力系統シミュレータにおける実機FRT対応PCSの検証試験
電力系統シミュレータで図3に示す試験系統を構成し,基幹系統模擬の電圧階級で三相地絡事故を発生させた。その結果,計測点(電圧階級・地点)により事故中の周波数が異なること,また,配電系統模擬の電圧階級に接続されたFRT対応PCSが単独運転検出機能の不要動作により脱落する場合があることを明らかとした(図4)。
以上から,同期発電機の並列容量が減少した将来系統においてはFRT対応PCSの単独運転検出機能が地絡事故時に不要動作するおそれがあり,その見極めのため,
・地絡事故が発生した基幹系統と,単独運転検出機能を有するPCSが連系された配電系統の両者において時刻同期した周波数の実測値
・PCSに実装されている単独運転検出機能の判定ロジックおよびパラメータ
についての情報を収集し,実態把握に努めることが重要である。

概要 (英文)

Anti-islanding protection relay of grid-connected inverter for photovoltaics generation (PV) is designed to satisfy frequency fluctuation tolerances as a part of Fault Ride Through (FRT) requirements regulated by the grid-interconnection code of Japan. Because anti-islanding protection relay might unnecessarily disconnect the PV under the high rate of change of frequency (RoCoF) condition, there are various considerations such as maintaining a certain level of the system inertia. On the other hand, the frequency fluctuates not only following a sudden large generation tripping, but also during three phase ground fault caused by a three-phase ground fault, as for the latter, the risk of unnecessarily disconnection due to anti-islanding protection relay has not been sufficiently considered yet. Therefore, the mechanism of frequency fluctuation during three phase ground fault is analyzed by the root-mean-square simulations and experimental validation using actual equipment in this study. As the result, it is revealed that the risk of unnecessarily disconnection due to anti-islanding protection relay is increased with decreasing voltage dip during three phase ground fault even if the system inertia is maintained.

報告書年度

2021

発行年月

2022/07

報告者

担当氏名所属

白崎 圭亮

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

天野 博之

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
事故時運転継続要件 Fault Ride Through Requirements
太陽光発電 Photovoltaic Generation
系統連系用インバータ Grid-connected inverter
単独運転検出機能 Anti-islanding Protection Relay
三相地絡事故 Three-phase Ground Fault
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry