電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21023

タイトル(和文)

テレコン用の従来通信方式とIEC 61850間の変換を担う通信アダプタの開発

タイトル(英文)

Development of Communication Adapter for IEC 61850 and Legacy Communication Systems used in Telecontrol

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
発変電所においてIEC 61850に基づく保護制御システムの導入が進むと,IEC 61850に互換性のない従来の通信方式1)を利用するテレコンとの接続が必要となり,データ形式等の変換のために通信アダプタが必要不可欠となる。従来の通信方式は,事業者ごとに仕様が異なる。そのため,仕様の数だけ通信アダプタの開発が求められる恐れがある。この問題を回避するため,異なる従来の通信方式に対応できるような通信アダプタの変換機能を設計する必要がある。
目  的
異なる従来の通信方式とIEC 61850との通信アダプタ(以下,61850アダプタ)の変換機能を設計する。さらに,設計に基づいて61850アダプタを試作し,その変換機能を評価する。
主な成果
1. 61850アダプタにおける変換機能の設計
異なる従来の通信方式に対応するため,通信プロトコル・情報形式・伝送項目などの調査を行い,IEC 61850との変換における共通的な変換処理と固有の変換処理を整理した。これを基に61850アダプタは,i) 従来の通信方式を使用する制御所親局との通信及び各社固有の変換処理を行う「既設機器通信部」と,ii) IEC 61850に対応した変電所構内テレコン子局との通信及び共通的な変換処理を行う「61850機器通信部」の二つに機能分離する構成とした(図 1)。
これらの通信部間の情報交換のために「中間通信サービス2)」を利用する方法を採用した。加えて,従来の通信方式における伝送項目とIEC 61850の情報モデルを対応させた「マッピング定義3)」をデータとして読み込む。中間通信サービスを用いることにより詳細仕様の違いを吸収できる。また,61850機器通信部でマッピング定義を用いることで同一内容の処理を共通化し,既設機器通信部を効率よく開発できる。
2. 61850アダプタの試作による変換機能の評価
ある事業者のHDLCテレコン仕様とCDTテレコン仕様を対象に61850アダプタを試作し,図 2に示す試験システムで変換機能の評価を行った。HDLC及びCDT方式に対する状態表示,計測表示,および選択制御における通信メッセージ等を適切に変換できることを確認した。共通的な変換処理を担う61850機器通信部に着目すると,状態値や計測値の変換を5 ms以下(図 3),選択指令の変換を50 ms以下,制御指令の変換を300 ms以下で実行できることを明らかにした。現状のテレコン親局と子局間の通信遅延時間の一例としては,状態値で最大4秒,計測値で最大12秒4)であり,61850アダプタは十分対応できると考えられる。
今後の展開(不印刷)
本アダプタは,次年度以降の限定研究等で活用する。

注1) 従来の通信方式の代表的なものとしては,CDT (Cyclic Digital data Transmission),HDLC (High level Data Link Control),PMCN (Protocol for Mission Critical Network use) である。
2) 中間通信サービスは,従来通信方式における情報の種別とIEC 61850通信サービスとの対応付けするための中間情報のことを指す。中間通信サービスの仕様の明確化及びTCP/IPを用いた実装により,61850機器通信部と既設機器通信部において,異なるメーカ製品間の相互運用を可能とする。
3) 従来通信方式におけるポジション,制御値,及び状態値それぞれに対し,IEC 61850における情報モデル,制御値,及び状態値との対応付けを柔軟に行うために外部から提供するデータのことを指す。
4) 「IP対応型CDT装置の開発,技術開発ニュースNo. 122,2006」では,系統運用情報伝送システムにおける伝送遅延時間は状態値(SV)で最大4秒,計測値(TM)で最大12秒と示されている。

概要 (英文)

IEC 61850-based systems for substations support interoperability and increase reliability and flexibility. In addition, it may lead to reduction in wiring and engineering time thereby improving set-up and maintenance process and reducing cost. However, one of the major challenges is the communications with the control centers employing legacy communication technologies that are based on protocols such as HDLC (High-level Data Link Control) or CDT (Cyclic Data Transmission). These systems cannot be replaced by IEC 61850-based system all at once. A communication adapter is thus required to communicate between these legacy communication systems and IEC 61850-based system during the transition period. Use of such communication adapter supports and accelerates the transition to IEC 61850-based systems. This report proposes a basic design of such communication adapter consisting of a common module that performs majority of protocol conversion tasks and a custom module that primarily performs the modulating and demodulating of payload information specific to each legacy communication protocol. Consideration is given to maximize the tasks in the common module while minimizing those in the custom module by defining intermediate communication services and mapping definition files.

報告書年度

2021

発行年月

2022/05

報告者

担当氏名所属

PAUDEL SAROJ

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

瀬戸 好弘

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

大谷 哲夫

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

山口 亮

通研電気工業株式会社

山本 勝也

通研電気工業株式会社

キーワード

和文英文
IEC 61850 IEC 61850
テレコン Telecontrol
保護制御システム Protection and control system
HDLC HDLC
CDT CDT
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