電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21028

タイトル(和文)

未塗装の送電用鉄塔を対象とした空撮画像を用いた劣化ランク自動判定システムの開発

タイトル(英文)

Automatic Decision System of Deteriorating Level for Galvanized Transmission Tower Using Aerial Image

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
一般送配電事業者および大手送電事業者では送電用鉄塔の更新時期延伸のため、膨大な数の鉄塔の中から錆の進行度合いが大きい鉄塔を対象とし防錆塗装注1)を行っている。錆の進行度合いは、昇塔して撮影した鋼材の色合いで判定することが多いが、その判定が個人の主観に依存するという課題がある。そこで、ヘリコプター等で空撮した画像にICTを適用して、鉄塔の簡易劣化ランクを判定するための支援ツールの開発を進めている。これまでに、判定する鉄塔に対応する3D構造モデルを用意し、マウス操作によって鉄塔部材を抽出後、機械学習注2)により判定するプロトタイプを開発している[1、2]。実業務では大量の空撮画像が蓄積されるため、大量の空撮画像を処理するには、空撮画像から鉄塔部材の自動抽出が必要である。
目  的
未塗装の送電用鉄塔を対象に深層学習を利用した鉄塔部材の自動抽出手法を開発するとともに、劣化ランク判定の自動化を実現する。
主な成果
1. 深層学習を利用した鉄塔部材の自動抽出
実際の劣化診断用として撮影された鉄塔を含む画像から鉄塔部材を抽出するために、深層学習を実施した。深層学習させるデータとして、1つの鉄塔に対して、鉄塔全体を1つの画像とした場合と1つの鉄塔を分割して複数枚の画像とした場合を比較した注3)。その結果、複数枚の画像を用いた場合は、複数枚画像間の関係性の学習が難しく、1つの画像で学習する方が良いことがわかった(図1)。また、学習に使う画素数の大きい方が、鉄塔の骨組みの情報が欠落しにくくなる。そこで、画素数の大きな鉄塔全体の映った画像を使って学習させることにより、鉄塔の画素をほぼ全て(99.5%)抽出できた(表1)。
2. 簡易劣化ランク判定の自動化システムの実現
鉄塔部材の自動抽出を組み込み、未塗装の送電用鉄塔を対象とした空撮画像を用いた劣化ランク自動判定システムを開発した。本システムは、既開発のプロトタイプで必要であったマウス操作を不要としたため、空撮画像を所定のフォルダーに保存すると、鉄塔部材を抽出し、劣化ランク判定までを自動で行うことができる(図2)。

注1) 鉄塔は建設時には未塗装であることが多く、建設から長い年月が経過すると、防錆塗装を必要とする鉄塔が増えていくため、本報告では未塗装鉄塔を対象としている。
注2) 種類の異なるものを区別するための境界線を、区別の難しいデータ間の距離が最大になるように求める手法。
注3) ヘリコプター等による空撮画像には、分割して撮影した場合と全体を撮影した場合があるため、両者を比較することとした。

概要 (英文)

We are trying to develop support tool using an aerial image of a transmission tower for decision of deteriorating level for the tower. The support tool judges which a deteriorating rank of a tower each pixel on the aerial image of the tower belongs. The support tool was not an automatic system because extraction of a tower image by hands was needed before the judgment. Using deep learning techniques, we have achieved automatic extraction of a tower in an aerial image. The support tool can extract 99.5% pixels on towers. Due to development of automatic tower extraction routine, the support tool can automatically judge deteriorating level for towers.

報告書年度

2021

発行年月

2022/07

報告者

担当氏名所属

石野 隆一

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
送電用鉄塔 Transmission Tower
Rust
画像処理 Image Processing
深層学習 Deep Learning
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