電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD24013

タイトル(和文)

EV急速充電に対するピーク負荷抑制方策の提案(その2)-メッシュサイズとピーク抑制効果の関係-

タイトル(英文)

Proposal of Peak Load Suppression Measures for EV Quick Charging (Part II) -Relationship Between Mesh Size and Peak suppression effect-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
電気自動車の急速充電によるピーク負荷への影響を評価した結果、特定のタイミングで充電行動が変化した場合に、大きなピークが発生することが明らかとなった[1]。そこで、先行研究[2]において充電シフトと系統用蓄電池注1)(以降、蓄電池)を併用したピーク負荷抑制方策を提案し、系統レベルにおいてピーク抑制効果があることを確認した。しかしながら、系統レベルでピークが抑制されていても、配電レベル単位など、局所的に見た場合に大きなピークが発生している可能性がある。

目  的
充電シフトと蓄電池を併用したピーク負荷抑制方策について、メッシュサイズとピーク抑制効果の関係を明らかにする。

主な成果
愛知県に4万台のEVが普及している状況を想定し、表1に示す各ケースについてメッシュ単位で充電需要を算出した結果、以下の知見を得た。
1. 充電シフトによるピーク抑制効果
金曜午後に充電しきい値注2)を変化させるケース2注3)におけるピークを基準として前日の木曜午後に充電しきい値を上げるケースのピーク抑制効果を評価した。充電しきい値を40%に上げるケース3では金曜日から木曜日へのシフト量が不足し、50%に上げるケース5ではシフト量が過大となるのに対して、45%に上げるケース4では両日のピークがバランスよく抑制されている(図1)。
2. メッシュ単位でのピーク負荷
シミュレーション期間5日間におけるメッシュ単位(1kmメッシュ)での最大ピーク負荷を大きい順に並べた図(図2)を見ると、基準ケースと比較してケース4は僅かに減少している程度である。定量的な評価指標であるピーク積分値注4)の比率は0.94となっており(図3)、ピーク抑制効果としては小さいといえる。また、メッシュサイズが小さい程、ピーク積分値の比率が大きくなるので(図3)、対象とするエリアが狭まる程、ピーク抑制効果は小さくなる。
3. 充電シフトによる蓄電池容量の削減効果
充電シフトによる蓄電池容量注5)の削減効果を評価するため、基準ケースであるケース2の蓄電池容量を1とした時のケース4の蓄電池容量の比を求めた(図4)。充電シフトによるピーク負荷抑制方策は、配電エリア単位など局所的に見た場合、ピーク抑制効果としては小さい一方で、蓄電池容量の削減効果は、メッシュサイズに依存することなく発揮されるので、蓄電池と併用することで効果的なピーク負荷抑制方策と成り得る。

注1)蓄電池の充放電制御は、その時の系統状況を考慮して一般送配電事業者が実施するものと想定する。ただし、一般送配電事業者は蓄電池を所有することができないため、市場を通して調整力を調達することとなる。
注2)EVはSOCが充電しきい値を下回ったら、充電ステーションに向かい、SOCが80%になるまで急速充電を行う。
注3)ケース2以降では、充電行動の変化を再現するために金曜午後の充電しきい値を上げている。充電しきい値を上げることでより多くのEVが充電ステーションに向かうため、大きなピークが発生する。
注4)メッシュサイズとピーク負荷の関係を定量的に評価するための指標として、図2における各ケースの面積に相当するピーク積分値を算出し、その比率がメッシュサイズに対してどのように変化するかを分析した。
注5)ケース4において、充電行動の変化が無い状態であるケース 1のピーク負荷以下となるために必要な蓄電池容量を算出した。

関連報告書:
[1] GD22006「EV急速充電器の高出力化による電力系統ピーク負荷への影響-地域メッシュサイズと充電需要の平滑化効果の関係-」(2023.04)
[2] GD23011「EV充電に対するピーク負荷抑制方策の提案-充電シフトと系統用蓄電池の併用によるピーク抑制の評価-」(2024.05)

概要 (英文)

Recently, the capacities of on-board batteries and the outputs of quick chargers have been increasing. Increase in battery capacity allows EV owners to charge more freely; however, charging may concentrate at a certain time such as on Friday afternoon, when EV owners charge in preparation for weekend use of EVs that drive relatively long distances. In the previous study, we proposed peak load suppression measures for quick charging with a combination of charging shift and a storage battery and verified the peak suppression effect at the power system level. However, even if the peak is suppressed at the power system level, a large peak may occur when viewed locally, such as the distribution network level. In this study, we evaluate the peak suppression effect of the proposed measures in mesh units, assuming several shift timings and shift amounts.
Through the analysis targeting Aichi Prefecture, we obtained the following. (1) There exists the optimal combination of the shift timing and the shift amount. (2) While the peak suppression effects by charging shifts can be expected at the power system level, they cannot be expected when viewed locally, such as distribution network level. (3) However, when used in combination with a storage battery, charging shifts have the effect of reducing the battery capacity. As the charging shift divides the peak in two, the peak duration is shortened; as a result, the charge amount to the storage battery is reduced.

報告書年度

2024

発行年月

2025/04

報告者

担当氏名所属

高木 雅昭

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

池谷 知彦

企画グループ

キーワード

和文英文
電気自動車 Electric Vehicle
急速充電 Quick Charging
ピーク負荷 Peak Load
交通シミュレータ Traffic Simulator
蓄電池 Battery
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