電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD24016
タイトル(和文)
電力保安用IPネットワークにおける高精度時刻同期方式の適用検討-PTP同期の精度評価とIP機器の同期機能割当て-
タイトル(英文)
A Study on Application of Precision Time Protocol in IP Networks for Power Utilities - Evaluation of PTP synchronization accuracy and assignment of synchronization functions to IP devices-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
近年,同期多重方式により運用されてきた電力保安用通信ネットワークのIP化が進められている。しかし,IPネットワークにおいては遅延時間変動が生じることが,サンプリングタイミングに厳しい要件を持つ送電線保護用電流差動リレーやPMU(Phasor Measurement Unit)の収容検討における課題となっている。そのため, IPネットワークを介して高精度な時刻同期を実現するPTP(Precision Time Protocol)の導入が期待されている注1)。一方,PTPにおける遅延計測メカニズムなどの各種設定や,スイッチにおけるPTP動作注2)(以下,PTPの各種設定等)の差異による時刻同期精度に対する影響評価は十分に行われていない。また,電力保安用IPネットワークに対する適用方策は明らかになっていない。
目 的
PTPの各種設定等の違いによる時刻同期精度に対する影響を実測評価する。また,その結果に基づき,電力保安用IPネットワークへの適用方策として,スイッチにおけるPTP動作の基本的な割当パターンの列挙と得失評価を行い,有望なパターンを絞り込む。
主な成果
1.PTPの各種設定等の違いによる時刻同期精度に対する影響評価
時刻を配信するマスタと時刻を受けるスレーブ間に,スイッチ4台を直列に接続した構成で,マスタとスレーブ間の同期誤差を実測評価した。PTPの各種設定等の違いによる時刻同期精度への影響を評価するため,表1に示すように基本設定を定め,そこから1項目ずつ設定を変更した。その結果, non-PTPの場合は,限られた条件のみでしかPMUの要求時刻同期精度(1 µs)等を実現できないこと,他の項目に関しては,時刻同期精度への影響が小さいことを明らかにした。
2.電力保安用IPネットワークへの適用検討
電力保安用IPネットワークへのPTP適用検討において,PTPの各種設定と各スイッチのPTP動作割当パターンの組合せが多数存在し,適切な組合せの選択が困難という課題がある。これに対し,多くの一般送配電事業者で採用されている階層構造のネットワークのうち四階層のものを想定し, 実測評価の結果を踏まえ,各階層のスイッチにおけるPTP動作の基本的な割当パターンを6つ列挙した。さらに,各パターンについて得失や組合せ可能なPTPの各種設定を整理し,有望な3パターンに絞り込んだ(表 2)。
注1) 高精度時刻同期の手法としてGPSに代表される衛星測位システムが考えられるが,セキュリティ上の懸念がある。
注2) PTPフレームのスイッチ通過時間を計測するTC(Transparent Clock)と,スイッチ自身が時計となるBC(Boundary Clock)がある。PTP非対応のスイッチはPTPフレームを他のフレームと同様に扱う。この動作をnon-PTPと呼ぶこととする。
概要 (英文)
In recent years, the application of IEC 61850 to current differential relays for transmission line protection and the introduction of PMU (Phasor Measurement Unit) for real-time monitoring of power system conditions have been considered. GNSS (Global Navigation Satellite System) is a possible method to synchronize sampling timing with high accuracy, but there are security concerns. In contrast, the introduction of PTP (Precision Time Protocol), which can transmit highly accurate time synchronization information over IP networks, is expected to be introduced. In order to introduce PTP, the various settings of PTP need to be properly configured, but these differences have not been adequately evaluated.
In this report, we summarized the differences among various PTP settings based on synchronization accuracy measurements using actual equipment and qualitative evaluations. Furthermore, we propose appropriate PTP settings when PTP is applied to IP networks for electric power utilities.
報告書年度
2024
発行年月
2025/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
田中 彰浩 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
大場 英二 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
IEEE 1588 | IEEE 1588 |
PTP | Precision Time Protocol (PTP) |
時刻同期 | Time synchronization |
PMU | Phasor Measurement Unit (PMU) |
IEC 61850 | IEC 61850 |