電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD24020

タイトル(和文)

リニューアル版CPATと連携したDCOPFプログラムの開発

タイトル(英文)

Development of a DCOPF Program Based on CPAT Renewal Version

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
再生可能エネルギー電源(再エネ)の導入拡大のため,我が国では系統混雑を前提とした運用に移行し,将来に向けた市場主導型の混雑管理方式の検討が進められている。そのため,有効電力潮流の分布や地点別限界費用(LMP)を高速に算出可能である直流法最適潮流計算(DCOPF注1))による解析のニーズが高まっている。しかし,当所のCPAT-R注2)に含まれる潮流計算プログラムLFA注3)ではDCOPFの計算が行えないため,これを基盤とした実用的なDCOPFの解析環境を実現する必要がある。
目  的
既開発のLFAと連携したDCOPFプログラムを開発し,実送電系統モデル注4)を含む複数のテスト用系統モデルを用いてその実用性を検証する。
主な成果
1. LFAと連携したDCOPFプログラムの開発
DCOPF単独の実行に加え,DCOPFで算出した発電機の出力配分を計算条件としたLFAの実行を可能とするプログラムを開発した(図1)。本プログラムは,利便性向上の観点からCPAT-Rと共通の入力データを用いて解析が行える設計としており,以下の点で実用性を向上させている。
(1) 送電損失の考慮による潮流断面作成時の結果差異注5)の低減
潮流断面作成時の結果差異を低減するため,送電損失を仮想的な負荷量として模擬しながらDCOPFの反復計算を行う手法をプログラムに実装した。テスト用系統モデルを用いた検証より,潮流断面作成時のスイング発電機の出力やブランチの有効電力潮流の差分値を低減できることを確認した(表1)。
また,実送電系統モデルを用いて,再エネ出力の比率をパラメータとして潮流断面を作成する場面を想定した検証を行った(表2)。その結果,いずれの需給条件においても,送電容量やフェンス潮流に関する制約等を考慮した上で,DCOPFの解の算出および潮流断面の作成が可能であることを確認した(図2)。
(2) ペナルティ項の導入による求解性の向上
目的関数に潮流制約の違反量に関するペナルティ項を導入し,制約条件を満たす実行可能解が存在しない場合においても,解を得ることを可能とした。IEEE-RTSモデルを用いた検証より,ペナルティ項の導入によって,送電容量が過小(10 MW)に設定されたケースにおいても解と制約からの潮流違反量を得られることを確認した(表3)。

注1)Direct Current Optimal Power Flow: 直流(DC)法に基づく最適潮流計算(OPF)のこと。電圧の大きさ,隣接ノードの位相差,ブランチの抵抗に関する近似を行った潮流方程式に関する制約条件を持つ。
注2)CPAT(CRIEPI’s Power System Analyzer Tools)とは,我が国の電力事業の実務で幅広く利用されている当所開発の実行値解析ソフトウェア群のこと。また,CPAT-Rは,拡張性や保守性の向上を目的にCPATの後継として開発しているリニューアル版のCPAT([1][2]参照)のこと。いずれにおいてもDCOPF機能は存在していない。
注3)Load Flow Analyzer(LFA)はCPATの潮流計算プログラムL法の後継版にあたる([1]参照)。
注4)ノード数615の送電系統を模擬したモデル。
注5)DCOPFの計算には近似が含まれるため(注1参照),その解に基づいて交流(AC)法の潮流計算を行うと,両者の計算結果に差異が生じる。

関連報告書:
[1] GD23015.「潮流計算プログラムLoad Flow Analyzerの開発-L法の課題を踏まえた解析機能の拡張-」(2024.06)
[2] GD23017.「電力系統動特性解析プログラムDyna Analyzerの開発-Y法後継プログラムの設計と数値積分手法の検証-」(2024.05)

概要 (英文)

Toward the large-scale integration of renewable energy sources in Japan, it is necessary to manage grid operation under transmission congestion and to consider market-driven congestion management schemes. To address these issues, DCOPF (DC Optimal Power Flow) is an essential analytical technique for efficiently obtaining power flow solutions and LMP (Locational Marginal Cost) while accounting for transmission constraints and cost-based generation dispatch. We have been developing an RMS analysis software suite named CPAT-R (CPAT Renewal Version); however, the load flow analysis tool LFA (Load Flow Analyzer) included in CPAT-R can't execute DCOPF. Therefore, we developed a DCOPF program whose solutions can be used as the initial conditions for AC power flow. The key features of the program are as follows:
1. The program can generate a power flow condition using the DCOPF method to account for transmission losses.
2. A penalty term related to transmission congestion is added to the objective function to avoid the infeasible condition in the optimization.
The verification using test data including a practical power system model shows that the developed program can generate power flow conditions while considering transmission congestion and power flow constraints.

報告書年度

2024

発行年月

2025/05

報告者

担当氏名所属

野本 悟史

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

小関 英雄

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
最適潮流計算 Optimal Power Flow
直流法 DC Power Flow
リニューアル版CPAT CPAT Renewal Version
潮流計算プログラムLFA Load Flow Analyzer
系統混雑 Transmission Congestion
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