電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD24025

タイトル(和文)

商用EV交通シミュレータの開発(その1)-宅配業務車両の電化による低炭素化の試算-

タイトル(英文)

Development of commercial EV traffic simulator (Part I) - Trial calculation of low carbonization by electrification of home-delivery service vehicle -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
運輸部門からのCO2排出量のうち、商用車は約4割を占めており、脱炭素化において重要な領域である。商用車は保有台数としては少ないが、走行距離が長いのでEV化した際の消費電力量も大きく、エネルギーマネジメント(エネマネ)注1)による再エネ充電のポテンシャルが大きい。様々な充電インフラやエネマネ、EVの仕様を考慮できる商用車用交通シミュレータを開発し、EV導入によるCO2削減効果を評価する必要がある。

目  的
宅配便を対象にEV配送車の走行を模擬する商用車用交通シミュレータを開発し、1事業所を対象に充電インフラの強化とエネマネの実施によるCO2削減効果を評価する。
主な成果
群馬県の前橋市と高崎市を配達エリアとする1事業所を対象に、配送車をEV化した際のCO2削減効果を表1の条件にて評価した。
1. 宅配便の走行パターンを模擬できる商用車用交通シミュレータの開発
当所で開発した乗用車用交通シミュレータをベースに、宅配便の走行パターンの模擬とエネマネ機能を具備した商用車用交通シミュレータを開発した。事業所および各配送車の配達エリアは円注2)で指定し、配送車の走行ルートを以下の手順で生成する(図1)。
① 出発時刻になったら事業所(A点)を出発し、配達エリアの中心地(B点)まで移動。
② 配達エリアの円内で複数回トリップを実施(赤矢印)し、所定の配達距離と配達時間を充たすタイミングで事業所(A点)に帰社。
③ 事業所で充電(1日の配達回数分だけ①~③を繰り返し)。
2. 充電インフラやエネマネによるCO2削減効果の比較
EV+PVケースはPV余剰電力を活用することでEVケースより24% CO2排出量が削減された(図2)。EV+PVケースを基準として他のケースのCO2削減効果を見てみると、QCケースは5%減となっており、QCを設置しただけでは効果が小さい(図2)。これは、充電器の出力が増加した分、昼の充電ピークは大きくなっているが、充電量としてはEV+PVケースとほとんど変わっていないためである(図3, 4)。QC(SOC制御)ケースは18%減となった(図2)。QCを利用する場合、計画的に空き容量を確保することでPV余剰電力をより多く活用できる(図5)。ただし、PV余剰電力を超過している分は、系統電力から充電してしまっている。QCの設置やSOC制御に加えて充電スケジュールを管理するQC(SOC制御+2グループ)ケースは41%減となった(図2)。2グループ化によって充電時間帯が分散され、昼はほぼPV余剰電力で充電されている(図6)。以上より、QC等の充電器出力の増加とエネマネを組み合わせることが効果的であることが示された。

注1)本報告では、エネマネとして表1に示すSOC制御と2グループ化を想定した。
注2)事業者へのヒアリングの結果、配送車ごとに配達エリアが決まっていることが分かったため、今回開発したシミュレータでは、配達エリアを簡易的に円で模擬した。今後、配達エリアの詳細化を行う予定である。
本報告の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「グリーンイノベーション基金事業 スマートモビリティ社会の構築」の結果得られたものである。https://green-innovation.nedo.go.jp/project/smart-mobility-society/scheme/

関連報告書:
[1] L09009「充電インフラ検討用次世代自動車交通シミュレータの開発-電気自動車導入に向けた基本解析機能構築-」(2010.06)

概要 (英文)

To realize a decarbonized society, the introduction of electric vehicles (EVs) is currently being promoted in the transportation sector. Commercial vehicles account for about 40% of CO2 emissions in the transport sector, which is a very important area for decarbonization in the transport sector. Although the number of commercial vehicles is small, the electricity consumption when converted into EVs is large because of the long mileage; thus, the CO2 reduction potential by energy management is large. In this report, we developed an EV traffic simulator for commercial vehicles, targeting the last one mile of home delivery, and evaluated the CO2 reduction effect by EV delivery vehicles per office basis. Through the analysis targeting Takasaki and Maebashi cities in Gunma Prefecture, we obtained following findings: (1) if chargers are high-powered, CO2 can be reduced more efficiently by combining them with energy management such as SOC control, because SOC control at early evening and night increases the amount of charge during the day; (2) by adding charging schedule management to the high-powered chargers and the SOC control, CO2 reduction effect can be further enhanced; (3) by installing a battery swap station, about 80% of the energy consumed by the traveling can be covered by PV surplus electricity.

報告書年度

2024

発行年月

2025/04

報告者

担当氏名所属

高木 雅昭

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

高橋 雅仁

グリッドイノベーション研究本部 研究統括室

池谷 知彦

企画グループ

荒木 伸太

構造計画研究所

志村 泰知

構造計画研究所

伊野 慎二

構造計画研究所

キーワード

和文英文
電気自動車 Electric Vehicle
商用車 Commercial Vehicle
交通シミュレータ Traffic Simulator
急速充電器 Quick Charger
バッテリー交換ステーション Battery Swap Station
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