報告書番号

GD24027

タイトル（和文）

多様な暖房環境を模擬可能な温熱快適性試験室の開発 その5 実住宅・仮想住宅における人体放熱量の評価手法の構築

タイトル（英文）

Development of a comfort test room that can simulate various thermal environments during heating Part5 Development of a method for evaluating the heat release from human in real and virtual housing

概要 （図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております）

背　　景
住宅の高断熱化などの省エネ施策を促進するには、省エネ効果だけでなく、温熱快適性の向上効果を評価し、広く情報提供することが重要である。そこで当所では、室内温熱環境が居住者の温熱快適性に与える影響を評価するため、多様な暖房環境を再現可能な試験室の開発を進めている。本試験室で実住宅・仮想住宅注1)と同等の温熱環境を再現するためには、実住宅・仮想住宅の人体の対流・放射放熱量の評価手法が必要となるが、その手法は確立されていない。

目　　的
在室者を模擬したサーマルマネキン注2)を用いて、実住宅・仮想住宅の人体の対流・放射放熱量の評価手法を構築する(図1)。

主な成果
1. 実住宅における人体放熱量の評価手法の構築
実住宅における人体放熱量の評価手法を構築した。本手法では、全球熱画像集録装置を用いて得られた熱画像注3)の放射温度と、サーマルマネキンの形状を模したマネキンモデルの可視画像注4)から算出した形態係数を考慮し、放射放熱量を評価する(図2)。本手法と放射伝熱解析注5)による放射放熱量の計算値を比較した結果(図1の☆)、全身の相対誤差は1.8%、部位別は6.3%以内となり、十分に一致していると考えられる(図3)。対流成分は、サーマルマネキンの測定値である顕熱放熱量から放射放熱量を差引くことで評価が可能となった。
2. 仮想住宅における人体放熱量の評価手法の構築
サーマルマネキンおよび試験用住宅注6)をモデル化し、放射伝熱と対流伝熱(CFD)の連成解析を行うことで、仮想住宅における人体放熱量の評価手法を構築し、そのうちのCFD解析の妥当性を検証した。実住宅のサーマルマネキンの対流放熱量とCFD解析による対流放熱量を比較した結果(図1の◇)、全身の対流放熱量の相対誤差は等級2住宅で7％、等級4住宅で21%となったが、住宅の断熱性能に応じた放熱量の違いを表現できていることが確認された(図4)。

今後の展開
CFD解析結果の相対誤差が温冷感に与える影響を検討する。また、本報告で構築した仮想住宅モデルを用いて、高断熱住宅におけるエアコン暖房の快適な温熱環境の実現可能性を評価する。

注1）設計・計画段階の住宅。仮想住宅の温熱環境の再現によって、省エネ施策による効果を体感できる。
注2）人体形状を模した発熱体であり、各部位からの顕熱放熱量を計測することができる。
注3）全球熱画像からマネキンモデルのメッシュごとに正射投影された熱画像を用いる。正射投影とは表面の法線方向から見た投影面を生成する手法である。正射投影された熱画像は、各画素の形態係数が等しく、熱画像の平均放射温度から対象面に入射する放射熱量を求めることができる。
注4）3Dモデリングソフト上のサーマルマネキンモデルのメッシュからの一人称視点の画像
注5）建築環境工学分野では、室内の放射環境の評価に放射伝熱解析が広く用いられている。当所においても多重反射、遮蔽を考慮した放射伝熱の計算プログラムを開発している。
注6）当所赤城試験センター内の環境試験室内に建設された平屋建て住宅。エアコンによる暖房方式を採用している。

関連報告書：
[1]C19007「多様な暖房環境を模擬可能な温熱快適性試験室の開発 その1 プロトタイプ構築と空気環境の評価」（2020.05）他

概要 （英文）

In To achieve energy conservation and thermal comfort in housing, an evaluation method considering the non-uniformity of the thermal environment is necessary. Therefore, we developed a test room to reproduce such conditions. By recreating the thermal environment of real and virtual housing, this research enables the evaluation of future energy conservation measures.
We propose a method for evaluating convective and radiative heat release from the human body. First, we developed a method for evaluating radiative heat release using a thermal manikin and a global thermal imaging system. By applying orthogonal projection to the thermal image of the manikin and considering the view factor, we obtained results consistent with radiative heat conduction analysis, with relative errors of 1.8% for the whole body and 6.3% for each part. Secondly, heat release of the human body in a virtual house was evaluated using a thermal manikin and a test house modeled by coupling analysis of radiative heat transfer and convective heat transfer (CFD). Comparing CFD-obtained convective heat release analysis values with actual measurements showed that the relative error in whole-body convective heat release was 7% for a Grade 2 house and 21% for a Grade 4 house. In the future, it will be necessary to consider the impact of these relative errors on thermal comfort. Meanwhile, differences in heat release according to the thermal insulation performance of the house were successfully simulated.

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