報告書番号

GD24028

タイトル（和文）

昼間沸き上げ型ヒートポンプ給湯機と蓄電池を考慮した小地域レベルのネット電力需要推定手法の考案

タイトル（英文）

Development of a Detailed Regional-Level Net Power Demand Estimation Method Considering Daytime Heat Pump Water Heater and Battery Storage

概要 （図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております）

背景
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、太陽光発電(PV)の導入が推進されており、ヒートポンプ給湯機(HP)や蓄電池(LIB)を活用した需給調整の役割がより重要になっている。電力供給の信頼性を確保しつつ、HP・LIBを活用してマイクログリッドの導入や災害時のレジリエンス向上を進めるためには、HP・LIBの普及を踏まえた地域(小地域レベル)のネット電力需要カーブ1)を想定することが重要である。
目的
HP・LIB を考慮した地域のネット電力需要推定手法を考案するとともに、普及シナリオ(導入量)を策定し、愛知県内の市区を対象に試算する。さらに、HP 沸き上げ運転開始
時刻の変更によるネット電力需要への影響を評価する。
主な成果
1.昼間沸き上げ型HP・LIBを考慮した地域のネット電力需要推定手法の考案
需要シミュレータ2)を用いて、住宅ごとに外気温の影響を考慮したHP の消費電力とシステム構成(PV・HP の導入有無)に応じたLIB の充放電電力を計算し、これらを積み上げ
ることで、HP・LIB を考慮した地域のネット電力需要を算出する手法を考案した(図1)。
2.HP・LIB導入によるネット電力需要とCO2排出削減の試算
住宅需要比率3)が高い名古屋市緑区(62%)と低い豊橋市(34%)を対象に住宅へのHP・LIBの普及シナリオ(表1)4)を設定し、ネット電力需要およびCO2 排出量を試算した。
・ 2050 年の大量-PV-HP(夜間)と大量-PV-HP(昼間)-LIB シナリオを比較した結果、昼間沸き上げ型HP およびLIB の大量導入により、年間ネット電力需要量が名古屋市緑区で
は約6GWh、豊橋市では約12GWh 減少した。
・ 名古屋市緑区の5 月平日において、夜間沸き上げ型HP ではネット電力需要はマイナスとなるが、昼間沸き上げ型HP・LIB を導入することでプラスに転じた(図2)。
・ 2030 年のなりゆき-PV-HP(夜間)と大量-PV-HP(昼間)-LIB の普及シナリオを比較し、PV、HP、LIB の導入によって、名古屋市緑区の住宅では約14%のCO2排出削減となった5)。
上記のように、HP・LIBを考慮した地域のネット電力需要などの評価が可能となった。
3.HP 沸き上げ運転開始時刻の変更によるネット電力需要への影響の評価
HP 沸き上げ運転開始時刻を11:00 に変更した結果、5 月の休日11:00 において、名古屋市緑区ではネット電力需要が約0.04GW増加し、ネット電力需要がプラスとなる地域の割
合が26%から41%となった。豊橋市では約0.08GW 増加し、プラスとなる地域の割合が30%から58%となっており、11:00 時点におけるネット電力需要の増加が確認された(図3)。
今後の展開
多方面で検討される自家消費優先型のHP・LIB 制御によるネット電力需要を評価する。

注1） 住宅や事業所の消費電力に加え、需要家の分散型電源による発電も含めた電力需要のこと（＝消費－発電）。
注2） 国勢調査等の公的データに基づいて、小地域レベルでのネット電力需要を推定可能なシミュレーションツール。
注3） 地域全体の電力需要に対して、住宅の電力需要が占める割合のこと。需要シミュレータによる2020 年の試算を行った。
注4） 事業所の電力需要：一定、非住宅用PV：導入ケースごとに普及率を設定、EV：政策目標に基づいたシナリオを策定[1]
注5） 脱炭素先行地域の計算手法に基づき算出した（CO2排出係数 2020 年：0.379 [kg-CO₂/kWh]、2030 年：0.370 [kg-CO₂/kWh]）。
関連報告書：
[1] GD22012「PV・EV大量導入時の小地域レベルでのネット電力需要の想定手法の考案」（2023.05）他

概要 （英文）

To achieve carbon neutrality by 2050, the expansion of photovoltaic (PV) power generation is being promoted, increasing the importance of demand-response management using heat pump water heaters (HPs) and lithium-ion batteries (LIBs). Ensuring a reliable power supply while enhancing microgrid integration and disaster resilience necessitates accurate estimation of the net electricity demand curves at the community level, considering the penetration of HPs and LIBs.
This study proposes a novel method for estimating the regional net electricity demand, accounting for the use of daytime charging HPs and LIBs. By developing adoption scenarios, this method can be applied to municipalities in Aichi Prefecture, Japan. The study further evaluates the potential for load leveling by adjusting the operation timing of HPs based on simulation results. The proposed demand estimation method utilizes a simulator that considers household attributes, including the power consumption of HPs and the charging and discharging patterns of LIBs. Applying this method to scenarios comparing high penetration of PV-HPs (nighttime) with PV-HPs (daytime) and LIBs revealed that annual net electricity demand decreased by approximately 6 GWh in Nagoya's Midori Ward and 12 GWh in Toyohashi City. Furthermore, CO2 emissions in residential areas were reduced by about 14% under the 2030 scenario. Adjusting the HP operation to 11:00 increased the net electricity demand during holidays in May, demonstrating the effectiveness of load leveling.

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