電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

H18008

タイトル(和文)

60kV級高経年CVケーブルの絶縁性能低下様相-絶縁破壊前駆遮断試験の適用と水トリーによる絶縁性能低下の確認-

タイトル(英文)

Deterioration Characteristics of Electrical Insulation for 60 kV class Aged XLPE cable - Application of Pre-breakdown Discharge Detection Test and Confirmation of Water-tree as a Cause of Degradation of Electrical Insulation Performance -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
60kV 級CVケーブルは1960年代初頭から実用化が進められ、内外半導電層と絶縁層の3 相同時押出方式注1)や乾式架橋技術注2)など劣化要因を抑制する製造技術が開発されるなど、幾多の技術的変遷を経て、1980 年代以降、導入が急速に進んだ。近年では、期待寿命である 30 年注3)を越えて運用される CV ケーブル設備の割合が増加傾向にある。したがって、これら高経年 CV ケーブルの絶縁性能低下特性や劣化要因の把握が重要となってきている。
目 的
60kV 級撤去 CV ケーブルに対して絶縁破壊前駆遮断試験(以下、前駆遮断試験)注4)を実施し、統計的な絶縁性能低下様相や絶縁性能低下要因を明らかにする。
主な成果
1. 前駆遮断試験設備の改良
当所では、CV ケーブルでのサブナノ秒の部分放電信号波形測定技術と到達時間差法による部分放電発生箇所の位置標定手法を開発してきた[1]。本報ではこれらに加え、部分放電信号波形測定システムからの信号で印加電圧を直接瞬時に遮断するとともに、外部ノイズに対する耐性を強化したシステムを構築した(図 1)。それまで 1~2 週間程度を要した部分放電発生箇所の位置標定注5)を、最短で1.5~2日間で終了できるようにした。
2. 高経年CVケーブルの絶縁性能低下様相
電力各社から提供された非遮水構造注6)で洞道布設ではない乾式架橋方式で製造された60kV 級撤去 CV ケーブル 99 相に対して前駆遮断試験を実施した。この結果、高経年 CVケーブルの絶縁性能はバラツキが大きく、経年30年程度で絶縁性能が初期値の10%程度のものもあれば初期値に近い状態のものもあることがわかった(図 2(a))。また、絶縁性能低下要因は乾式CVケーブルであっても水トリーであることを明らかにした(図2(b))。
注1)絶縁体と中心導体、接地導体の界面を平滑にするため、中心導体上および絶縁体外面に半導電性ポリエチレンの層を絶縁体と同時に押し出し成形する製造方法。絶縁体中に形成される突起状の絶縁欠陥の形成を抑制し、CV ケーブルの主要な劣化要因である電気トリーや水トリーの形成を低減できる。
注2)絶縁体である架橋ポリエチレンの架橋工程で、架橋剤入りのポリエチレンを加熱する必要がある。古くは高温水蒸気にて架橋を行 っていたが、水蒸気が絶縁体内に残留し、微小なボイドの形成や残留水分による水トリー発生が懸念されたことから、高温乾燥ガスにて加熱する方式が主流となった。この手法を乾式架橋技術という。
注3)JEC3408:2015にて絶縁体に対する水の影響がないCVケーブルでは使用年数30年として試験電圧値が制定されていることから、CVケーブルの期待寿命を30年としている。
注4)前駆遮断試験では、部分放電測定を併用して交流高電圧をステップ的に昇圧印加し、絶縁破壊前駆現象である部分放電のケーブル内部での発生が検出された時点で瞬時に課電を停止する。このとき、絶縁最弱点箇所は部分放電発生箇所であり、部分放電発生箇所の絶縁体を切り出して部分放電の痕跡である電気トリーの発生箇所を観察することで、絶縁性能低下要因を把握できる。迅速かつ精度良い部分放電発生位置の標定が前駆遮断試験の成功率向上や試験期間短縮につながる。
注5)当所では 2001 年度より撤去 CVケーブルに対する前駆遮断試験を実施している。当時はケーブルの遮蔽層を 4等分し、部分放電発生部を2等分してさらに部分放電発生部を標定することを繰り返して位置標定を行っていた。
注6)アルミラミネート遮水層や金属被のないCVケーブル。絶縁体に水分が水蒸気として浸入する可能性がある。
今後の展開
管路内部の状況をはじめとする布設環境や運用状況などの各種要因と絶縁性能との相関性を明らかにするとともに、洞道布設 CV ケーブル注7)や遮水層付き CV ケーブルといった水トリー劣化が抑制されると想定される条件での絶縁性能低下様相を解明する。

概要 (英文)

XLPE cable is widely used for power transmission and distribution system from 6.6 kV to 500 kV grids in Japan. 60 kV class XLPE cable is applied to various situation, such as underground transmission line between substations, connection from substation to customer with relatively large capacity, connecting line among GIS, transformer, switchgear, overhead line, etc. in substation and power plant, connecting line among railway substations in railway service facility and large scale manufacturing plant, and so on. Their introduction into power grid as an underground transmission line started on 1964 and then their production technology had been developed drastically including dry-curing method for cross linkage process of cable insulation layer, and the XLPE cable manufactured with the developed technology had widely introduced into power grids in 1980's and 1990's. Some of them are removed from power grid due to development of power grid, etc., and the removed XLPE cables are exposed to the investigation of their electrical insulation performance by the pre-breakdown discharge detection test. The experimental surveillance revealed that the electrical insulation performance in some specimen degraded to around 10 % of their initial electrical insulation performance and some of them kept high performance same as their initial condition. And the degradation cause was water tree phenomenon even for the dry-cured XLPE cable.

報告書年度

2018

発行年月

2019/06

報告者

担当氏名所属

高橋 俊裕

電力技術研究所 固体絶縁・劣化現象領域

栗原 隆史

電力技術研究所 固体絶縁・劣化現象領域

岡本 達希

電力中央研究所

キーワード

和文英文
高経年CVケーブル Highly aged XLPE cable
水トリー Water tree
絶縁破壊前駆遮断試験 Pre-breakdown discharge detection test
絶縁性能 Electrical insulation performance
部分放電 Partial discharge
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry