電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR21003

タイトル(和文)

国内原子力発電プラントにおける火災発生頻度一般分布の推定

タイトル(英文)

Estimation of Generic Fire Ignition Frequency Distribution for Japanese Nuclear Power Plants

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
火災は原子力発電プラントに対する潜在的脅威であり、意思決定における火災PRAの活用は安全性向上に対し有益である。米国では、火災PRA手法整備の一環として火災発生頻度が定量化されている(注1)。一方、わが国においては、火災発生頻度の評価例がない。
目  的
国内原子力発電プラントにおける火災事例情報を、基準を明確化し、事例を精査する体系的なプロセスに基づき収集・分析し、出力運転時内部火災PRAに適用可能な火災発生頻度一般分布(注2)を定量化する。
主な成果
1. 火災事例収集基準の策定及び収集
火災成長プロセス及び火災源外への熱的影響の程度等に着目し、火災事例収集基準を策定した。当該基準に基づき国内火災事例候補を収集し、事例件数及び露出時間(注3)を計数した(件数:369件、収集規模:56プラント、露出時間:973炉年)。
2. 火災事例分析
(1) 分析基準の策定及び初期スクリーニング:収集した事例を確認された火災源外への影響や火災成長・拡大の潜在的可能性(以下、潜在的影響度)により区分する定性的な分析基準を策定した。当該基準に基づき、初期スクリーニングにより区分対象事例(177件)を抽出した。
(2) 潜在的影響度を考慮した事例区分: 上記(1)で策定した分析基準を適用し、潜在的影響度に応じて上記177事例を区分した。この結果、潜在的に火災源外へ影響を及ぼしうるPC(Potentially Challenging)火災(注4)に区分される事例件数が多いことが判った。
(3) 火災源カテゴリへの分類:国内事例の火災源の特徴(火災発生位置や火災源機器)及び米国の火災発生頻度評価書(NUREG-2169(注1))に基づき定義し、各事例を火災源カテゴリに分類した。この結果、電気盤火災(HEAFを除く)等の特定の火災源カテゴリに事例が偏在し、事例件数上位3カテゴリが全体の約80%を占める(図1)。
3. 火災発生頻度一般分布の推定
火災源カテゴリ毎の事例件数と露出時間の計数結果に基づき、火災発生頻度一般分布をベイズ法により推定した(図2)。その結果、全カテゴリを通して平均値は6×10-4~5×10-2(/炉年)、エラーファクタは1.4~19.0であった(注5)。この結果は、明確な基準下で体系的な国内データの収集・分析結果が反映されており、実機評価へ適用可能である。

注1 NUREG-2169, “Nuclear Power Plant Fire Ignition Frequency and Non Suppression Probability Estimation Using the Updated Fire Events Database: United States Fire Event Experience Through 2009”, Jan. 2015。米国原子力規制委員会(NRC)の評価書であり、米国原子力発電プラントの運転経験に基づく火災発生頻度一般分布の定量結果の他、火災発生頻度潜在的影響度による事例区分の定義や火災源カテゴリの定義も記載されており、米国の火災PRAや火災防護において広く参照されている。
注2 国内原子力発電プラントの運転経験を包括的に反映した火災発生頻度分布を指す。
注3 関心のある事象が発生し得る期間の長さ。本研究における「関心のある事象」は火災事象である。
注4 火災源外への影響が顕在化した事例を「Challenging(CH)火災」に、換気口の有無や消火の成否等の条件が実事例と異なれば火災源への影響が顕在化しうる潜在的事例を「Potentially Challenging(PC)火災」に区分する。この他、CH火災やPC火災に区分されない「Non-Challenging(NC)火災」、区分不能な事例であるUndetermined(U)火災に分類する。これらは米国NRCの火災発生頻度評価(NUREG-2169)と同等である。
注5 NUREG-2169では、全カテゴリを通じ、平均値: 1×10-4~3×10-2(/炉年)、エラーファクタ:2.0~32.5であり、本評価結果と概ね同等である。

概要 (英文)


報告書年度

2021

発行年月

2022/02

報告者

担当氏名所属

内田 剛志

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

吉田 智朗

原子力リスク研究センター

白井 孝治

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

長田 泰典

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム(2021.6.15出向解除)

キーワード

和文英文
火災事例分析 Fire Event Analysis
火災発生頻度一般分布 Generic Fire Ignition Frequency Distribution
火災影響度 Fire Severity
火災PRA Fire Probabilistic Risk Assessment
ベイズ推定 Bayesian Inference
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry