電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

O17002

タイトル(和文)

津波波力と漂流物衝突力を受けるコンクリート壁の応答評価法の提案

タイトル(英文)

Development of response evaluation method of concrete wall subjected to tsunami wave force and debris impact force.

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
原子力発電所の津波防護施設の安全性に対して影響を与える津波の主要な作用として,津波の波圧および津波漂流物の衝突が重畳し,作用継続時間のスケールが顕著に異なる荷重条件となることが想定される.このため,津波に対する原子力発電所のリスク評価にあたっては,そのような荷重条件下における防護施設を構成する構造物の応答評価が求められる.これまでに,既往実験により基本的な応答特性については明らかにされていたが,構造物の破壊挙動を含めた応答特性の把握は十分ではなく,フラジリティ評価に適用可能な応答評価法の開発も未着手であった.
目的
大規模水理実験と数値解析を通して,津波波力と漂流物衝突力を受けるコンクリート壁の応答特性を把握する.また,数値解析の適用性を検証し,簡易な応答評価法を提案する.
主な成果
1.津波波力と漂流物衝突力を受けるコンクリート壁の応答特性
津波・氾濫流水路を用いた既往実験の分析結果と非線形有限要素解析(FEM)による再現解析結果から,以下の知見を得た.
(1)壁基部のひずみの過渡応答に着目すると,波圧作用による曲げモーメントに加えて,漂流物の衝突に伴うパルス状の波形が発生し,その後減衰していく波形性状が重畳して発生することを明らかにした.
(2)実験の多くのケースで壁基部に曲げひび割れが発生した.ただし,中には斜めひび割れが発生するケースがあった.この斜めひび割れ発生要因は,漂流物の偏心衝突によるものであることを,壁基部の反力の分析およびFEM解析結果から明らかにした.
2.フラジリティ評価に向けた応答評価法の開発
(1)津波波力を静的に,また,漂流物の衝突をばねでモデル化する荷重評価法を提案した.この荷重評価法をFEM解析に適用した結果,壁基部の曲げひび割れだけでなく,漂流物の偏心衝突に起因する斜めひび割れも再現可能であることを確認した.
(2)簡易な応答評価法の開発第1段階として,漂流物衝突の影響が支配的となる津波作用時において,壁の三次元挙動が支配的とならないコンクリート壁の挙動に着目した応答評価法を開発した.この手法は,2.(1)の荷重評価法とコンクリート壁の履歴特性を考慮した二次元梁モデルによるもので,今回の検証範囲では,コンクリート壁基部の応答挙動を十分な精度で評価できることを明らかにした.
今後の展開
構造物の破壊挙動に及ぼす漂流物の衝突位置の違いによる影響を分析し,それに基づき今回開発したコンクリート壁の履歴特性を考慮した応答評価法に改良を加える.

概要 (英文)

In order to investigate response characteristics of a concrete sea wall subjected to tsunami wave force and tsunami driftage impact force, we conducted large-scale hydraulic experiments using the large-scale tsunami physical simulator at the CRIEPI and nonlinear structural analysis. Also, to contribute to the fragility evaluation, the authors proposed a response evaluation method of the wall considering the superimposed tsunami forces. In an experimental study, when partial contact was made by tsunami driftage on the reinforced concrete sea wall, it was confirmed in some cases that a characteristic diagonal cracks which varied from the flexural cracks at the basement of the wall. And nonlinear finite element analysis employed a suggested load assessment method reproduced the observed crack pattern. In addition, we proposed an evaluation method against the superimposed tsunami forces using two dimensional nonlinear beam analytical model. Comparing to the experimental results, the proposed method was able to evaluate the response of the base of the wall with sufficient accuracy.

報告書年度

2017

発行年月

2018/05

報告者

担当氏名所属

柴山 淳

地球工学研究所 構造工学領域

宮川 義範

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

木原 直人

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

甲斐田 秀樹

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

キーワード

和文英文
津波 Tsunami
防潮堤 Sea Wall
大規模水理実験 Large-scale Hydraulic Experiments
フラジリティ評価 Fragility Assessment
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