電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q17007

タイトル(和文)

金属キャスクバスケット用アルミニウム合金の強度特性と熱時効の影響に関する基礎的検討

タイトル(英文)

Strength Properties of Aluminum Alloy for Basket of Metal Cask Including Thermal Aging Effect

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
わが国では、使用済燃料の中間貯蔵方式として、使用済燃料を不活性ガスとともに金属キャスクに貯蔵する方式が採用されている。バスケットはキャスク内部で個々の使用済燃料集合体を所定の位置に収納するためのものであり、燃料の崩壊熱により長時間高温(100~200℃程度)にさらされるが、使用済燃料の幾何学的配列を維持し、未臨界を保つための構造強度が要求される。アルミニウム合金は軽量かつ伝熱特性に優れるため、使用済燃料の収納量を増やせる利点があり、また加工性にも優れることから、バスケット用の材料として有望である。ただし、バスケットに使用するためには、高温に長時間さらされた後でも必要な強度を有していることを確かめる必要がある。

目 的
バスケット用アルミニウム合金A3004-H112(熱間押出材)の基本的強度特性の把握を目的として、温度、ひずみ速度および試験片採取方向が引張特性に及ぼす影響や温度、試験片採取方向などが破壊靭性に及ぼす影響を明らかにする。また、様々な条件で熱時効処理を行った材料についても引張試験を行い、貯蔵(最長60年)後の材料に対する強度評価手法の確立に向けた基礎的検討を実施する。

主な成果
1. 初期材の強度特性の把握
0.2%耐力は200℃を、引張強さは150℃を超えた辺りから低下し、その温度域ではひずみ速度の影響も顕著となった。伸びや絞りは100℃近辺から増加し始め、200℃では延性き裂進展開始時のJ積分JQが、室温の3倍以上の値となった。押出方向に垂直な方向(T方向)に負荷した方が押出方向(L方向)に負荷した場合よりも0.2%耐力と引張強さともに僅かに低下する傾向が見られた。また、T方向に負荷し、き裂をL方向に進展させた(TL)試験片のJQは、L方向に負荷し、き裂をT方向に進展させた(LT)試験片より顕著に低くなった。
2. アルミ合金プレートの破壊評価
上記で得られた試験結果を基に、バスケットプレートの寸法を想定したアルミ合金板に対して、2パラメータ法による破壊評価を実施した結果、板厚の1/4深さのき裂を有する場合においても破壊は基本的に塑性崩壊に支配されると推定された。
3. 材料強度に及ぼす熱時効の影響調査
種々の温度加速による熱時効処理を施した材料について引張試験を実施した結果、時効によって消失する可能性のある強化メカニズムを完全に消去することを目指した熱処理材(520℃で10h保持後0.3℃/hで冷却)において、初期材に対する強度の低下が最も大きくなり、0.2%耐力は最大で28%程度、引張強さは最大で20%程度低下した。また、熱処理時間を500h、冷却速度を0.5℃/hとした場合では、熱処理温度の低い材料の方が引張強度は低下する傾向が認められた。さらに、熱処理後の冷却速度の影響については、炉冷(10~50℃/h程度)よりも0.5℃/h冷却の方が引張強さは低下する傾向があった。冷却速度が大きいと、固溶強化に効く溶質原子の過飽和固溶が生じて強度が高くなり、貯蔵後の強度を過大評価する恐れがあることから、熱処理後の冷却速度には注意を要する。

概要 (英文)

There are plans to use aluminum alloys as basket materials in transportation and storage casks for spent nuclear fuels. However, the mechanical strength of some aluminum alloys decreases due to aging phenomena when they are kept at high temperatures for an extended period. In this report, tensile and fracture toughness tests were conducted under various conditions using as-received material of aluminum alloy A3004-H112 to collect basic data. Furthermore, tensile tests were also conducted for heat-treated materials under various conditions to develop a strength evaluation method after storage (maximum 60 years). Regarding the effect of anisotropy on tensile properties, 0.2% proof stress, Sy, and ultimate tensile strength, Su, of the transverse (T) specimens were slightly smaller than those of the longitudinal (L) specimens. The effect of strain rate on the tensile properties was clearly observed at the temperatures exceeding 200 deg C for Sy and 150 deg C for Su. The true stress-true strain curves were formulated by the Ramberg-Osgood equation with satisfactory accuracy. The values of the fracture toughness JQ of TL specimens were generally lower than those of the LT specimens. The failure of cracked aluminum plates was also assessed based on a failure assessment diagram (FAD) method and it was confirmed that the failure was dominated by plastic collapse. Based on the results of tensile tests for heat-treated materials, it is implied that particular attention should be paid to the cooling rate after the heat-treatment for predicting strength after 60 years.

報告書年度

2017

発行年月

2018/04

報告者

担当氏名所属

茂山 治久

材料科学研究所 構造材料領域

高橋 由紀夫

材料科学研究所

三浦 直樹

材料科学研究所 構造材料領域

亘 真澄

地球工学研究所 バックエンド研究センター

キーワード

和文英文
中間貯蔵 Interim storage
バスケット用アルミニウム合金 Aluminum alloy for basket
熱時効 Thermal aging
引張試験 Tensile test
弾塑性破壊靭性試験 Elastic-plastic fracture toughness test
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry