電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q20009

タイトル(和文)

難着氷雪化素材およびその送電設備への適用可能性に関する調査

タイトル(英文)

A review about icephobic and snowphobic materials and their applicability to power transmission equipment

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
送電設備を有する電力各社は氷雪害に対して,着氷雪による被害(設備・金具等の損傷,電線振動による相間短絡,がいしのフラッシオーバ),落氷雪による被害(周辺施設への被害,電線跳ね上がりによる相間短絡)のそれぞれに対策を講じている.将来,十分な性能を有する難着氷雪化素材が見いだされれば,着氷雪・落氷雪の両方の被害に対する効果的な予防が実現すると期待される.難着氷雪化素材について近年様々なコンセプトに基づいた研究開発例が報告されており,それらの素材に関する既往知見を整理して比較することが送電設備へ適用する素材候補を考える上で必要とされている.また,送電設備に適用出来る施工形態や素材は各設備に応じて変わりうると考えられ,この観点でも考慮すべき事項を整理することが有用である.
目  的
送電設備の氷雪害防止に向けた難着氷雪化素材の研究開発動向を文献調査するとともに,その適用に際し考慮すべき事項を整理する.
主な成果
1. 難着氷雪化素材の性能に関する動向調査
(1) 既往研究を調査して,難着氷雪化素材の性能について「粗さを付与した表面」を持つ素材,「平坦な表面」を持つ素材に大別した上で整理した(表1).液膜等を有する平滑面を持つ素材(SLIPS注1,Liquid Infused Polymers注2など),ならびにCassie型超撥水性素材注3は特に難着氷雪化性能が高い.
(2) SLIPS,Liquid Infused Polymers,ならびにCassie型超撥水性素材は高い性能を有する反面,着氷雪の繰り返しによる表面状態の変化に起因した性能低下が実用面で特に問題となる(表2).また,有機材料を用いた素材に共通して,紫外線や熱による性能低下も大きな課題である.このような課題に対し,最新の研究事例ではSLIPSの液膜の脱落を抑制させることによる耐久性の向上などが検討されており,技術的進歩が見られる.
2. 送電設備へ適用する上で考慮すべき事項
(1) 送電設備へ適用する場合に想定される施工形態について整理した(表3).各設備に応じて,適用可能と考えられる施工形態(テープ,塗料など)および素材がある.このうち,塗料の施工方法については,現状では人手によるコスト・安全面の懸念がある。将来的にはロボットやドローンを用いた最新の機械塗装技術が有望である.
(2) 素材の実用性を確認するための評価・試験方法に関連する規格を整理した.現状では,難着氷雪化性能に関する試験規格は定められていないが,着雪試験について国内標準化を念頭においた標準条件書の作成が防災科学研究所を主体に進められている.

概要 (英文)

Mitigation of serious damage from severe ice storms remains a big challenge when operating and maintaining networked power transmission equipment. Considerable efforts have been made to address this issue and the power utility companies install effective countermeasures to reduce the weight of ice and snow accreted on each component (i.e. the tower, conductor, insulator and ground wire). More effective methods, however, are expected to be developed from the perspective of preventing the various risks associated with ice shedding. Anti-icing methods using icephobic/snowphobic materials are promising if we assume that their ability to eliminate atmospheric icing completely is feasible. This report reviews the current state of icephobic/snowphobic materials research and information of their applicability to power transmission equipment. At first, surface properties desired for icephobic/snowphobic materials are clarified based on their water wettability. Secondly, the icephobic/snowphobic performances of each material are sorted by collecting and classifying previous research and development. Finally, key issues in terms of applicability to power transmission equipment are discussed and the latest research, aiming to overcome past research shortcomings, is reviewed.

報告書年度

2020

発行年月

2021/04

報告者

担当氏名所属

郡司 俊佑

材料科学研究所 電気化学領域

杉本 聡一郎

地球工学研究所 流体科学領域

キーワード

和文英文
着氷雪 Atmospheric icing
送電設備 Power transmission equipment
撥水性 Hydrophobicity
難着氷性 Icephobicity
難着雪性 Snowphobicity
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