電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

R19004

タイトル(和文)

二次調整力①の発動量低減と周波数品質の維持・向上を両立する広域LFC制御方式の提案

タイトル(英文)

Proposal of cross-regional load frequency control logic for reduction of synchronized frequency restoration reserve activation and preservation/improvement of frequency quality

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 わが国では調整力の調達・運用コストおよび発動量の低減を目的として,調整力の広域化の検討が進められている。調整力のうち,負荷周波数制御(LFC)で活用される二次調整力①については,現状のLFCの制御ロジックや制御周期が供給エリア毎に異なっており,広域運用(広域LFC)を実現する上での課題とされている。対策として,各エリアのLFCの制御ロジック等を統一した上で広域運用を行う案も挙げられているが,それには長い期間を要するため,広域LFCの早期実現は困難となる。

目  的
 広域LFCの早期実現に向けて,現状の各エリアのLFCを活用しつつ,二次調整力①の発動量(LFC発動量)の低減と周波数品質の維持を図る広域LFC制御方式を提案する。また,提案方式を既開発の需給・周波数シミュレーションモデル1)に組み込み,LFC発動量および周波数品質に対する効果をシミュレーションにより明らかにする。

主な成果
1. 広域LFC制御方式の提案
 提案する広域LFC制御方式では,現状の周波数品質を維持しつつ,LFC発動量の低減を図るため,広域LFCの制御時点における各エリアの需給偏差(AR)とLFC発動量を基に,各エリアのLFC制御目標値およびエリア間における二次調整力①の融通量(補正量Z)を以下の通り算出する(図1,2。なお,以下のA)~D)は図1,2中のA)~D)と対応)。
A) 各エリアのARを合算し,それを各エリアのLFC動作可能量2)の比で案分する。
B) 各エリアのLFC発動量を合算し,それを各エリアのLFC容量3)の比で案分する。
C) 上記A),B)をエリア毎に合計し,各エリアのLFC制御目標値を算出する。
D) 各エリアのLFC制御目標値と元々のAR+LFC発動量の差分から補正量Zを算出する。
 提案方式の特長および期待される効果は以下の通りである。
・A)において,LFC動作可能量比で案分することにより,応答性の高い調整力を有効に活用して連系系統全体で見た需給偏差を制御できるため,周波数品質の向上が期待できる。
・B)において,各エリアのLFC発動量が同一方向となるように制御することとなるため,LFC発動量を低減できる。また,LFC容量比案分によりエリア間におけるLFC発動量の偏在化を防止できるため,電力系統のレジリエンスの観点4)からも有用と考えられる。

2. 提案する広域LFC制御方式のLFC発動量と周波数品質に対する効果
 提案方式で広域LFCを実施した場合におけるLFC発動量の低減効果および周波数品質の維持・向上効果をシミュレーションにより検証した。その結果,現状運用と同等以上の周波数品質を実現しつつ,LFC発動量を低減できることが明らかになった(図3)。

注1) 徳光,天野:「全国10エリアの需給・周波数シミュレーションモデルの開発」,電力中央研究所報告R18003,2019-6.
2) 広域LFCの制御周期(本研究では5秒)における二次調整力①の変化可能量をLFC動作可能量とした。
3) 二次調整力①の商品要件案(応動時間5分)に基づき,二次調整力①の5分間の変化可能量をLFC容量とした。
4) ここでは,電源脱落等により大きな需給偏差が生じた場合における周波数回復の早さの観点を指す。

概要 (英文)

In Japan, the frequency control is currently performed by each transmission system operator (TSO) using control reserves procured through public tenders. However, in order to realize more efficient procurement and operation of control reserves, the introduction of the cross-regional cooperation of control reserves are discussed. As for load frequency control (LFC), the control logic and control cycle are different in each TSO. Therefore, it is necessary to identify technical challenges and to study countermeasures for the cross-regional cooperation of LFC.
In this report, the cross-regional LFC logic to realize both reduction of synchronized frequency restoration reserve (S-FRR, which is called aFRR in Europe) activation and preservation/improvement of frequency quality is proposed. The proposed logic mainly consists of two-step. In the first step, ARs from several participating TSOs are netted and the total AR is shared based on the rate of change of S-FRR in each TSO. In the second step, the S-FRR activations from several participating TSOs are netted and the total S-FRR activation is shared based on the capacity of S-FRR in each TSO.
Simulation studies are performed to validate the proposed logic using Japanese power system model for supply-demand and frequency simulation. The simulation results show that the proposed logic can reduce both the frequency fluctuations and the S-FRR activations than the current local LFC by each TSO.

報告書年度

2019

発行年月

2020/07

報告者

担当氏名所属

徳光 啓太

システム技術研究所 電力システム領域

田村 潤

システム技術研究所 電力システム領域

天野 博之

システム技術研究所 電力システム領域

キーワード

和文英文
周波数 Frequency
負荷周波数制御 Load frequency control
二次調整力① Synchronized frequency restoration reserve
広域運用 Cross-regional cooperation
シミュレーション Simulation
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