電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

R20003

タイトル(和文)

LFCの仕様統一下における二次調整力①の広域運用に関するシミュレーション検討

タイトル(英文)

Simulation Study of Cross Regional Cooperation for Synchronized Frequency Restoration Reserve under Unified Specification of Load Frequency Control

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 わが国では二次調整力①(二次①)の広域運用の早期実現に向けて,各エリアの現状の負荷周波数制御(LFC)機能を活用した広域運用(現状活用案の広域LFC)が検討されている。また,その次のフェーズとして,更なる周波数品質の向上やメリットオーダー(MO)1)による二次①の運用コストの低減,需給調整市場への事業者の参入機会拡大を図るため,各エリアの中央給電指令所(中給)システムの仕様を統一した上での広域LFC(仕様統一案の広域LFC)の検討も進められている。

目  的
 当所既提案の現状活用案の広域LFC 2)をベースに,仕様統一案の広域LFCについて,周波数品質の向上と二次①の運用コスト低減を実現する手法を提案する。また,提案手法で仕様統一案の広域LFCを行った場合の有効性を,わが国の広域連系系統モデル3)を活用したシミュレーションにより検証する。

主な成果
1. 仕様統一案の広域LFC手法の提案
 現状活用案の広域LFCでは,地域要求量(AR)および二次①のエリア間融通量(補正量Z)に基づき,各エリアでLFC指令値を計算する。また,この補正量Zは,交流連系系統大でのARおよび既LFC動作量4)をそれぞれエリア毎に配分した量から算出される。
一方,仕様統一案では,広域LFC機能で交流連系系統における全LFC対象機のLFC指令値を計算することが志向されている5)(図1)。このため,本研究では交流連系系統大でのARと既LFC動作量を,それぞれLFC対象機毎に配分し,これらの配分量の和をLFC指令値とすることを提案する(図2)。ARと既LFC動作量の配分は以下の通り行う。
・周波数偏差の早期解消を図るため,ARは各LFC対象機の出力変化速度の比で配分する。
・二次①の運用コストを低減するため,既LFC動作量は単価が優位なLFC対象機から順に,出力変化速度を考慮した範囲で最大限配分する。ただし,周波数偏差の解消を優先し,この配分可能範囲からはAR配分量を予め差し引く。

2. 提案手法で仕様統一案の広域LFCを行った場合の有効性検証
 提案手法で仕様統一案の広域LFCを行った場合,現状活用案の広域LFCの場合と比べて,周波数変動や発電コスト6)を低減できることをシミュレーションにより検証した(図3)。この結果の主な要因として,提案手法はARと既LFC動作量をLFC対象機毎に配分することにより,これらをエリア毎に配分する現状活用案と比べて,応答性や経済性の高いLFC対象機をより有効に活用できることが挙げられる。

注1) 調整力の発動を単価が優位な順(上げ方向は安い順に,下げ方向は高い順)に行うこと。
2) 徳光,天野:「周波数品質の維持・向上と二次調整力①の運用コスト低減を両立する広域LFC手法の提案」,電力中央研究所報告R20XXX,2021-X.
3) 徳光,天野:「全国10エリアの需給・周波数シミュレーションモデルの開発」,電力中央研究所報告R18003,2019-6.
4) 当該時点における二次調整力①の発動量(kW)のこと。
5) 送配電網運用委員会:「二次調整力①広域運用の検討状況について」,第18回需給調整市場検討小委員会資料5,2020-8.
6) ここでは,1日の総発電量に対するkWhコスト(発電量[kWh]×単価[¥/kWh]|の合計)を評価した。

概要 (英文)

In Japan, the load frequency control (LFC) is currently performed by each transmission system operator (TSO), and the control logic and control cycle are different in each TSO. However, to realize the improvement of the frequency quality and reduction of the frequency control cost, the unification of LFC specification and the introduction of the cross regional LFC (CRLFC) are discussed.
In this report, we propose the CRLFC method under the unified specification of LFC. The proposed method mainly consists of three steps. First, the sum of the area requirements (AR) of the participating TSOs is distributed to the synchronized frequency restoration reserve (S-FRR, which is called aFRR in Europe) units in these TSOs on a pro-rata basis. Second, sum of the S-FRR activations of the participating TSOs is distributed to the S-FRR units in these TSOs based on the merit-order activation scheme. Finally, the sums of the AR distribution amount and the S-FRR activation distribution amount becomes the LFC references for each S-FRR unit.
To validate the proposed method, we perform simulations using Japanese power system model for supply-demand and frequency analysis. The simulation results show that the proposed method can reduce both the frequency fluctuations and the frequency control cost than the CRLFC under different LFC specifications in each TSO.

報告書年度

2020

発行年月

2021/04

報告者

担当氏名所属

徳光 啓太

システム技術研究所 電力システム領域

天野 博之

システム技術研究所 電力システム領域

キーワード

和文英文
周波数 Frequency
負荷周波数制御 Load frequency control
二次調整力① Synchronized frequency restoration reserve
広域運用 Cross-regional cooperation
シミュレーション Simulation
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