電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SE22001

タイトル(和文)

効率的な設備形成を考慮したEV充電インフラ整備に向けた英国の制度設計と配電事業者の取組み -充電時間・場所のコントロールに着目して-

タイトル(英文)

Institutional Designs and Initiatives of Distribution Network Operators in UK to Promote EV Charging Infrastructure Considering Efficient Facility Formation - Focusing on controlling charging time and location -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
EV普及に積極的な英国では、EV充電が一斉に行われ、配電設備の系統制約が発生することが問題となっている。そこで、「一斉充電による急峻なピーク負荷および系統制約の発生を回避するため、充電時間帯を誘導すること(充電時間のコントロール)」、と「配電設備形成の効率化の観点から、充電インフラが適切な場所に設置されるように誘導すること(充電場所のコントロール)」が重要となっている。
目  的
我が国においても、英国と同様の問題が今後生じ得ることから、英国での充電時間と場所のコントロールに向けた配電事業に関する議論を踏まえつつ、我が国で留意すべき点を整理する。
主な成果
1.充電時間と場所のコントロールに向けた取組みの類型化
英国で取組まれている充電時間と場所のコントロールを実施主体者別(配電事業者、政府・地方自治体・規制機関)に整理した。英国では、充電時間と場所のコントロールに向け、配電事業者、政府・地方自治体・規制機関がそれぞれの立場で様々な取組みを実施している。EV普及が進み配電事業に与える影響が大きくなるにつれ、効率的な設備形成の必要性が認識され、配電事業者の自主的な取組みに加え、EVの利便性を損なわない範囲でより強制力の強い取組み(規制的手法)等複数の手法が実施されている。
2.充電時間と充電場所のコントロールに向けた取組みの方向性
充電時間と充電場所のコントロールに向けた規制的手法は以下のとおり。これらは今後、我が国でもEV普及が進み、配電設備への影響が大きくなった場合に必要となり得る取組みである。
(1)充電時間のコントロール(遠隔制御装置設置義務化と事前充電時間設定義務化)
英国では、充電インフラ設置事業者に対し、2018年に充電時間、充電量を遠隔制御可能とする装置を充電インフラに設置することを、2021年に需要が高い時間帯の充電を回避するように充電時間を事前に設定することを義務化した。遠隔制御装置設置義務化により充電インフラ設置のコスト増加、事前充電時間設定義務化により、充電インフラ設置事業者への設定作業の増加といったデメリットがあるものの、得られる効果の方が大きいと英国運輸省は評価している。なお事前充電時間設定を、ユーザーが変更することは可能である。
(2)充電場所のコントロール(充電インフラ設置場所の事前協議)
英国では、規制機関が配電事業者に対し、充電インフラ設置に関わる配電設備増強工事の費用をレベニューキャップ規制外とする条件として、配電事業者と充電インフラ設置事業者等が、充電インフラ設置場所について事前協議することを定めている。
この手法では、充電インフラの整備に向け、配電事業者に積極的な工事を促すために、その工事費用をレベニューキャップ規制外とする。ただし、この取組の適用条件として、経済効率的で、安定供給に資する工事計画の策定、充電インフラ起因の配電設備増強工事に合わせた設備改修工事を実施できるように、充電インフラ設置事業者の計画リストを受け取り、事前に協議を実施することが求められる。
我が国においても2023年からレベニューキャップ規制が導入され、効率的な配電設備形成と、脱炭素に向けた充電インフラの整備を並行的に進めることが求められる。EV普及が進んだ断面では、配電事業者、充電インフラ設置事業者のそれぞれの立場を考慮しつつ、社会全体として最適な取組みを検討することが経済効率的で安定供給に資する設備形成に繋がると考えられる。

概要 (英文)

Since the declaration of carbon neutrality by 2050, the movement towards decarbonization of the transportation sector is accelerating. Japanese government set a goal to phase out sale of new gasoline-engine vehicles by 2035 in order to promote the shift to hybrid and EVs (Electric Vehicle). However, without managed charging time and reasonable allocation of charging station, it will require excessive additional investments by DNOs (Distribution Network Operator). In order to encourage efficient investments by DNOs, the UK is working on controlling charging time and location. As the diffusion of EVs accelerate, our country is likely to face similar challenges in the future, and the lessons learned from UK can provide valuable insights to efficient facility formation for DNOs. This report classifies EV promotion methods in UK by implementation organizations (i.e DNOs, regulators), and we particularly focus on the initiatives that will lead to an efficient facility formation. We found that a prior consultation is one of the effective measures to control locations of charging stations under revenue cap regulation as it allows various organizations to participate in determining the order and timing of strengthening and expansion of distribution network.

報告書年度

2022

発行年月

2022/06

報告者

担当氏名所属

石井 佑弥

社会経済研究所

キーワード

和文英文
カーボンニュートラル Carbon neutrality
電気自動車 Electric vehicle
充電ステーション Charging station
電力ネットワーク Electric Network
英国 United Kingdom
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