背景原子力発電所の運転チームが高度なチーム機能を発揮するためには、チームをどのように編成するかが重要な課題である。チーム編成にあたっては各運転員の技能や経歴が参考とされているが、近年、運転員の性格に着目した実験研究が実施され性格とチームエラーとの関連性が指摘されるなど、運転チーム員の性格の組み合わせについても関心が高まっている。 目的運転チーム員の性格の組み合わせとチーム機能との関連性を被験者実験により明らかとする。 主な成果
本研究では谷田部・ギルフォード法による性格類型(図1)をもとに被験者をチーム構成し、以下の実検により(1)作業分担と方向づけ、(2)リカバリィ(メンバー相互に援助し、ヒューマンエラー発生可能性を低く抑える機能)(3)連携の維持、の3つのチーム機能について評価し、チーム員の性格組み合わせとチーム機能の関係を考察した。
(1)評価値の多重比較による統計分析※1ではD型の2チームと他の性格組み合わせのチームとの間には明瞭な有意差があった(36ケース中32ケース)。また、各チームの3つの機能についての評価値はいずれもA型チーム≦ACD型混成チーム≦C型チーム<D型チームの順であった(図2)。
(a)チーム員間での会話数が多いチームは評価値が高い、
(b)A型チームは,当直長から他の2人の運転員への指示が少ない、 (c)C型チームは,連携の維持に関する会話が相対的に少ない、 などチーム機能の評価値はチーム員間の発話内容に反映されることが分かった。 以上の結果から、親密な関係を形成するまでにいたっていないチーム構成初期の段階では、チーム員の性格組み合わせとチームの機能との間には対応関係があり、アドホックなチーム構成においては必要とされる技能や知見に加えて性格の組み合わせも考慮の対象となりうることが示唆される。 ※1:8チームの評価値に対して、2チームの評価値の間に有意差があるかを全組み合わせについて調べる統計手法。ここでは5%有意差について評価した。 |
![]() (図1) ![]() (表1) ![]() (図2) |