電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y11035

タイトル(和文)

地域における広域連携の形成過程にみるアクターの役割-関西広域連合および東北のグランドデザイン形成のケーススタディ-

タイトル(英文)

A Role of Each Actor in Formation Process of Regional Wide-range Cooperation - Case Studies on Union of Kansai Local Governments and Ground Design in Tohoku -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

東日本大震災が発生して1年あまりが経過したが,当初より地方分権(地域主権)と広域防災等の観点から必要性が指摘されていた,東北全体を俯瞰したグランドデザインについては,現段階では具体的な検討はなされていない.本報告は,地域における広域連携の可能性について,各アクターの役割や利害関心に着目して,インタビュー調査や行政文書等の文献調査結果を分析することにより,東北全体を俯瞰したグランドデザイン形成のあり方について知見を得ることを目的としている.現段階では国内で唯一の県境を越えた特別地方公共団体である関西広域連合の成立と運営に関与している行政と産業のアクターを対象として,また,東北の広域的なグランドデザイン形成に寄与することが想定される行政と産業のアクターを対象として調査を実施した.得られた知見は以下のとおりである.第1に, 関西広域連合の成立過程における促進・阻害要因については以下のとおりである.関西広域連合の成立において,半世紀を超えて地方制度改革へ深く関与している関西経済連合会が果たした役割は大きい.1つの重要な転機は,府県廃止(道州制)から広域連合へと,つまりパートナーを国から地方へ変えるという戦略転換を行ったことである.府県のいくつかの懸念については,府県存置のまま国出先機関の丸ごと移管への道筋にある程度の説得力が与えられ,歴代の関経連会長や首長らの調整,それを支えた独立した専従の事務局の存在が,この点をクリアする際のキーとなり得た.関西広域連合は,現状ではまだ,広域計画の実効性をはじめ多くの課題を抱えてはいるものの,新しい責任主体として,国をはじめとする交渉相手に対する政治力や情報発信力が高まった点が評価されている.第2に,東北のグランドデザイン形成に向けては,東北というアイデンティティの難しさ(観光などの利害が比較的一致しやすい分野以外では,県境を越えた圏域で活動することの困難さがあること),役割分担のロックイン(復旧・復興は基本的には個々の基礎自治体が主体となって進め,県が調整し,国が財政的な支援をするという共通認識がもたれ,制度化がなされていること),いまだ不確実性の高い広域連合(自らが組織化に動くことについては様子見の姿勢であること),などが挙げられる.通常の国出先機関に加えて,復興庁・復興局という他にはない国の機関が存在することになった東北においては,広域化することのメリットの可視化がなおさら重要となる.しかし,これから多くの復興事業を経験することになる東北こそが,その利害調整のあり方をほかの地方に先駆けて示すことが可能な状況にある.その中で,復旧期の復興庁から復興期の広域連携への合意形成に向けて,産業界が復興事業の創出・誘致において果たし得る先導的な役割は大きい.

概要 (英文)

A wide-range ground design of Tohoku has not been examined though many analysts and organizations have pointed out its need just after the Great East Japan Earthquake in terms of mainly decentralization of authority and wide area disaster risk reduction. This paper derive some implications from drivers and barriers of formulation process of the union of Kansai local governments which is sole local public authority consisting of several prefectures in Kansai, and clarifies the drivers and barriers to formulate wide-range ground design of Tohoku by interviews and literature surveys.
The main results are as follows; firstly, drivers to formulate new administration body of wide-range area in Kansai are a leadership of industry sector, joint efforts of the public and private sectors coordinated by both sectors' leaders, and supportive activities of executive office consisting of public and private sectors. Second, barriers to formulate ground design of Tohoku are actors' lack of identity as Tohoku region, locked-in role sharing among municipality, prefecture, and central government, and uncertainty of new administration body of wide-range area in which actors tend to see how the Union of Kansai Local Governments works. Tohoku, however, can visualize the advantage of new administration body of wide-range area because they will have a lot of experiences with reconstruction projects. Therefore, industrial sector must be expected to play an greater role in formulating a ground design in Tohoku.

報告書年度

2011

発行年月

2012/04

報告者

担当氏名所属

馬場 健司

社会経済研究所 経済・社会システム領域

金 振

社会経済研究所 経済・社会システム領域

青木 一益

富山大学 経済学部 経営法学科

キーワード

和文英文
東日本大震災 Great East Japan Earthquake
復興計画 Reconstruction Planning
関西広域連合 Union of Kansai Local Governments
地方分権 Decentralization of Authority
政治的機会構造 Political Opportunity Structure
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