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2023.10.17

米国の大統領選挙とパリ協定―選挙前に新目標提出か 共和党勝利で再脱退も―

  • 気候変動

電気新聞グローバルアイ

 米大統領選挙まで、あと約1年となった。民主党では、バイデン大統領が再選をかけて出馬を表明済みであり、共和党では、トランプ前大統領が圧倒的な人気である。このまま行けば、前回と同様、バイデン対トランプになる。

 米国の大統領選挙は、20年以上にわたって、世界の気候変動対策の行方を左右してきた。特に、過去2回の選挙はパリ協定を巡る情勢を揺るがし、日本にも影響があった。そこで、2016年と2020年の選挙を振り返り、2024年の選挙で何が起こりそうかを考えたい。

 まずは、2016年の選挙である。パリ協定は2015年12月のCOP21で採択され、翌年に選挙があった。共和党の予備選でトランプ氏が勝ち上がると、同氏は「パリ協定をキャンセルする」と発言し、当選すれば、協定を抜けるのではないかとの疑念が国際的に広まった。

 国際条約は採択しただけでは効力を持たない。各国が締結し、条約ごとに定められた要件を満たしたときに正式に発効する。パリ協定の場合、発効要件は55か国以上が締結し、その排出量が世界全体の55%以上となることだった。しかも、発効から4年間は協定を脱退できないとされた。

 そのため、オバマ政権のうちに発効すれば、トランプ氏が当選しても当面は、協定脱退を阻止できる。各国は発効の要件を満たすべく、締結を前倒しし、2016年11月4日に、パリ協定は発効した。日本は、TPPの締結を巡る国会審議の混乱があり、パリ協定の締結が11月8日にずれ込んだ。

 その11月8日には、大統領選挙があり、トランプ氏が当選した。トランプ大統領は2017年6月に協定脱退を表明したが、正式に脱退できたのは、発効から4年後の2020年11月4日だった。

 次に、2020年の選挙ではどうだったか。奇しくも、正式脱退前日の11月3日に選挙があり、トランプ大統領は敗北した。バイデン大統領は、2021年1月20日の就任日に協定復帰を通告し、脱退は短期間に留まった。

 復帰以上に影響があったのが「気候サミット」公約である。バイデン氏は選挙戦中に、就任から100日以内に気候サミットを主催し、他国に野心的な削減目標の提示を求めるとした。そして、就任から1週間後の1月27日の大統領令で、4月22日にサミットを開催し、この日までに米国も2030年目標を提示するとした。

 日本は当初、2021年夏を目途に2030年目標を見直すと言われていたが、菅総理がサミットにあわせて、従来の2013年比26%減から46%減に目標を引き上げた。当時、エネルギー基本計画の見直しを審議会で検討していたが、その結論を得ない中での目標設定となった。

 来年の選挙はどうか。気になるのは、パリ協定上、2035年目標の提出期限が、11月の選挙から間もない2025年2月となっていることだ。

 今のところは筆者の憶測に過ぎないが、バイデン政権は投票日を待たずに、むしろ選挙公約に絡める形で早期に目標を提出するかもしれない。その場合、2016年の早期発効や2021年の気候サミットと同様に、G7等で協調して、野心的な目標を米国の選挙前に提出という流れになりうる。

 しかし、共和党候補が勝てば、再び協定から脱退するだろう。その場合、バイデン政権が提出した米国の目標は反故になる。

電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員 上野 貴弘

電気新聞2023年10月17日掲載
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