研究資料

2024.04

10地域統合 経済・電力需要予測モデルの需要想定への活用に関する予備的検討

  • エネルギー需要
  • 経済・社会

報告書番号:SE23508

概要

背景

 一般送配電事業者によるエリア別の電力需要想定は,電力広域的運営推進機関(広域機関,OCCTO)による経済見通しに基づき作成されている.広域機関の経済見通しは基本的に全国値であり,人口を除いて電力供給エリア別の情報は含まれていない.今後,人口動態や経済成長率などの経済指標は地域差が拡大していく可能性が高いことを踏まえると,需要想定における説明性や予測精度の向上を図るためには,地域経済指標の活用を検討することが有益である.

目的

 本稿では,全国の経済指標を出発点として,地域別の経済指標と電力需要を予測することが可能な,当所開発の電力供給10 地域統合 経済・電力需要予測モデル(10 地域統合モデル)の概要を紹介し,同モデルによる予測の精度検証や課題抽出を通じて,需要想定への活用についての予備的な検討を行う.

主な成果

1. モデルの概要

 10 地域統合モデルは,全国ベースのマクロモデル [1] を基礎として開発した,10 地域別マクロモデルの純移輸出(域内外の財・サービス取引の収支尻)を地域間で連結することにより統合したモデルである(図).同モデルの活用により,全国ベースの経済見通しを出発点として,需要想定に活用可能な各地域の経済指標を予測することができる.

2. 予測精度の検証

 電力需要想定への活用に関する予備的検討として予測精度の検証を実施した.検証は推定期間内(モデル・パラメータの推定期間内である2005~2014 年度の10 年間)と推定期間外(2015~2019 年度の5 年間)の両期間における,予測値と実績値の乖離率の平均平方誤差(平均誤差率)により行った.結果は以下の通りである.
 (1) 推定期間内の平均誤差率は,販売電力量が0.4%~0.8%,実質域内総生産(GRP)が0.3%~0.7%であった.民間住宅と第2 次産業GRP において誤差率が大きい地域があるものの,ほとんどの地域・変数で3%を下回り,平均誤差率を報告している過去のマクロモデルに比べても遜色ない予測精度を持つと評価できる(表1).
 (2) 一方,推定期間外の販売電力量の平均誤差率は0.4%~6.1%であった.良好な予測精度を示す地域もあったが,誤差率の大きさにはバラツキがあり,東北,中部,関西で小さく,東京と沖縄で大きかった.実質GRP の平均誤差率は0.3%~1.5%と良好な結果であった.内訳の需要項目の中では,民間住宅が1.2%~10.1%と地域によりバラツキがあり,北海道,四国,九州,沖縄で誤差率が大きかった(表2).
 (3) 推定期間外の平均誤差率は多くの地域・変数で推定期間内の誤差率を上回った.この結果は,計量経済モデルによる予測ではよくみられることであり,推定式のパラメータの不安定性や重要な説明変数の欠落についての検討が必要であることを示している.他方,経済指標の実質GRP も平均誤差率は推定期間外が推定期間内より大きい傾向がみられたものの,誤差率の悪化度合いは販売電力量に比べて小さかった.
 (4) 推定期間外の検証では,2016 年度供給計画における需要想定の平均誤差率との相対比較を行った.販売電力量(10 地域統合モデル)の平均誤差率は,東北と関西において需要電力量(需要想定)の誤差率を下回った.上回った8 地域のうち6 地域の誤差率の差(10 地域統合モデルの誤差率-需要想定の誤差率)は1%ポイント未満に収まったが,東京と沖縄は各々1.3%ポイント,5.4%ポイントであった.

3. 抽出された課題

 需要想定への活用可能性を向上させるための課題は以下の通りである.
 (1) 予測精度の向上策としては,平均誤差率が高かった推定式の改良,電力需要関数の細分化や産業別生産指標の説明変数への採用などモデル構造の精緻化が挙げられる.
 (2) 本稿では推定期間外の精度検証のための期間を確保するため,モデル推定は2001~2014 年度のデータにより行った.実際の予測計算のためには2015 年度以降の最新データを含めた再推定や公表の遅いデータの補完推計が必要である.
 (3) 広域機関が公表する経済見通しの8 指標と10 地域統合モデルの外生変数とを一致させつつ,説明性や精度の向上を図るため,どの程度の外生変数を追加していくのかについて検討する必要がある.また,経済指標の地域差が拡大していくことが予想される中で,電灯・電力需要を説明する指標の選択肢を増やしていくことも課題になると考えられる.

キーワード

地域経済、電力需要、経済予測、マクロ計量経済モデル、日本経済

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