
当研究所の経営層による寄稿やインタビュー記事等を紹介しています。
電力中央研究所 理事長 平岩 芳朗
「次元の異なる」概念
kW(キロワット)とkWh(キロワット・アワー)は文字通り「次元の異なる」概念だが、混同されがちである。エネルギーや電気について語る時、両者の違いを理解して使用する必要がある。kWは「瞬間のパワー」の単位であり、電力設備や電気製品の容量やエンジンの能力にも使われる。
これに対し、kWhは「パワーを発揮し続ける時のエネルギー」、発電量や電力消費量の単位である。
『太陽光発電100万キロワット。(容量は)大型原子力1基相当』といったメディアの表現がいまだに散見されるが、事情を知らない読者や視聴者に「太陽光発電を100万キロワット建設すれば大型原子力1基分を置き換えられる」とのイメージも想起させ、ミスリーディングだ。電源構成が議論される中、異なる種類の発電設備を比較し「相当」と表記する以上、期待される発電量(kWh)や出力の安定性なども含めて評価すべきだ。
太陽光発電と原子力発電の発電容量当たりの期待される発電可能量を、発電設備の稼働率から大ざっぱに比較してみる。太陽光発電の場合、①一日のうち発電可能な時間は朝から夕方までの昼間であり半分(50%)②昼間の太陽光の発電出力カーブは終日晴天であっても、正午をピークとするベル型であり、発電電力量は半分(50%)③日本の場合、日射は晴天(100%)や雨天(ほぼ0%)、曇天で変化するため、年間の期待値を半分(50%)と仮定する。
①~③を勘案すると0.5×0.5×0.5=0.125、太陽光発電の平均稼働率は13%程度となり、これは国内太陽光発電の稼働率実績に近い。一方、原子力発電の平均稼働率は定期点検などを考慮しても80%程度。同じ発電容量(kW)でも、発電量(kWh)に直結する稼働率の差は歴然だ。
安定した風況下での風力発電と太陽光発電の導入が進むドイツでは、2025年末の両電源の合計設備容量は年間ピーク需要の約2.5倍を擁するが、25年を15分単位のコマで見ると、両電源の発電出力合計が電力需要の1割に達しないコマは年間の約7%を占め、不足分は火力発電など他の電源や電力輸入で賄っている。
供給力低下2つの様相
20年度冬季以降、燃料制約や厳寒・季節外れの高気温による電力需要の急増、災害による電源の計画外停止に起因した需給逼迫(ひっぱく)が発生した。供給力の低下には二つの様相がある。発電機トラブルなどにより発電設備の能力(kW)が低下するケースと、発電設備の能力は健全でも、十分な燃料や日射・風速が得られず、発電設備の能力をフルに発揮できないケースである。
後者は、想定以上に高い電力需要が何日も継続し必要な発電燃料が調達能力を超えたり、計画した燃料調達に支障が生じる場合や、厳気象により変動性再生可能エネルギーの出力低下が何日も継続する場合が考えられる。ドイツでは暗い凪(ドゥンケル・フラウテ)と呼ばれる、冬季を中心に一帯の風力発電や太陽光発電の出力低下が1~2週間程度継続する一方、電力需要が増加し、ガス火力発電量が大幅に増加する事象が発生している。再生エネ大量導入時は、相当のバックアップ電源や需要対策、長周期蓄エネルギー、燃料調達の柔軟性が必要だ。
蓄電池運用の難しさ
揚水発電や蓄電池などのエネルギー貯蔵設備は、発電燃料の制約などにより揚水や充放電に必要なエネルギーが十分に確保できないと、設備能力はあっても発電量は制約を受ける。蓄積したエネルギーを何時間(または何日間)に分配し発電するかによっても、時々の発電出力は変化する。
揚水発電や蓄電池の運用上の難しさは、火力発電のように発電しつつ継続的に燃料供給ができないため、上池の貯水量や蓄電量からいつ、どのように発電し、その後いつ、どのレベルまで揚水・充電し、その後の発電に備えるかという充電・放電のスケジュールを、サイクルごと、数サイクルにわたって組むことである。ここでは需給面のみならず、電力市場において時間帯ごとに電気の経済価値が異なることも考慮される。
日刊工業新聞 2026年6月29日掲載
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