米国では、AIへの関心の高まりからデータセンター(DC)が多数設置されている。DC等の大規模負荷の送電網への接続には設備増強のため待ち時間が長期化することもあり、早期運開を求めるDC側のニーズと合致しないことも多い。
このような問題の対応策として、併設負荷という考え方が提唱されている。発電機と送電網の接続点の発電機側にDC等を設け、併設された発電機から供給を受けるものであるが、その中に保護リレー等の設備を設置し、発電機の停止時にも送電網からバックアップの供給を受けないという「送電サービスを受けない併設負荷」と呼ばれる構成がある。従来の自家発自己消費の構成と類似しているものの、対象となる発電機や負荷の規模といった点では違いがある(図)。
この構成を支持する者は、大規模負荷への供給を早期に開始できることや、原子力発電所への併設により「クリーンで安定した」電力を求めるDC等のニーズに一致するという点を指摘している。
一方、併設負荷への供給で送電網への供給が減ることにより系統増強の必要性が生じた場合は費用負担をすべきとの意見や、送電網に電気的に接続され同期している以上、送電網からサービスは受けており、その対価を支払うべきとの意見もある。
米国北東部の系統運用者であるPJMの地域はDCの建設需要が高く、併設負荷構成への希望も強かった。PJMは、2022年に大規模負荷を併設した発電機の送電網接続に関するルール整備の議論を開始したが、発電事業者と送電網所有者の意見対立が厳しいことから策定を断念し、24年春に既存ルールの下で大規模負荷を併設する際の条件等をガイダンスの形で取りまとめた。
ガイダンスの成立を受ける形で「送電サービスを受けない併設負荷」の構成での送電網への接続を求めたサスケハナ原子力発電所に対し、連邦の規制当局であるFERCは、立証すべきことを満たしてないという形式論に基づき申請を退けた。発電事業者は、PJMのルールが併設負荷の取扱いを明示的に示していないことは不公正であるとしてFERCに不服申立てを行い、この点に関する審理が継続している。
DC事業者の団体等は、送電網からサービスを受けているのであれば対価を支払う用意はあるが、どのようなサービスを受けているのか明示される必要があると主張している。
PJMやFERCといった連邦レベルの動きとは別に、小売についての権限を持つ州のレベルでも大規模負荷の取扱いに関する動きが見られる。
発電機と負荷を送電網から完全に切り離すことを条件に公益事業規制の適用を免除し、大規模負荷の建設を促進しようとする例がある一方、大規模負荷を送電網に接続する際、長期の供給契約や最低料金の設定を義務付ける、あるいは接続に伴う設備増強費用を大規模需要家のみに負担させることを通じ、コストの適切な分配を図ることを目指す例も見られる。
米国の後を追う形で日本でもDCの建設が進められている。総合資源エネ調の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委や、ワット・ビット連携官民懇談会等の場で、大規模負荷の接続に関する議論は既に進められており、ある意味では米国よりも議論が先行しているとも言える。
大規模負荷の接続にあたっては、計画通りに接続が行われるのかといった論点もある中で、米国の連邦・州での議論を踏まえつつ課題を洗い出し、日本での議論につなげていくことが有益である。
※なお、米国での議論の詳細については、電力中央研究所研究資料「送電サービスを受けない『併設負荷』の取扱い―米国・PJMでの議論から―」を参照されたい。
電気新聞 2025年6月11日掲載