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電気新聞ゼミナール

電気新聞ゼミナール(365)
ヒートポンプの普及や電化の行方を左右する二次エネルギー価格比とは?

二次エネルギー価格比とは

二次エネルギー価格比とは、電力と燃料(都市ガスや重油など)の単位発熱量あたりの価格の比率を指す。この比率が小さいほど、電化の経済的メリットが大きくなる。
近年、特に英語圏の一部では、系統電力と都市ガスの価格比を「スパーク・ギャップ」と表現する例も見られる。

ヒートポンプの要求COPとの関係

図は、都市ガス燃焼機器とエネルギーコストが等しくなるヒートポンプの成績係数(COP)の関係を表す。二次エネルギー価格比が小さいほど、要求COPは小さい。

図

フィンランドやスウェーデンでは、二次エネルギー価格比が1を下回っており、COPが1であってもエネルギーコストは削減となる。すなわち、ヒートポンプどころか電気ヒーターでもエネルギーコスト削減となる。

一方、現在の日本では、二次エネルギー価格比が2.9であり、エネルギーコスト削減のためには2.6以上のCOPが必要になる。ヒートポンプがくみ上げる温度差(温度リフト)に換算すると、およそ70度差以下でなければエネルギーコスト削減にならない。

さらに、ヒートポンプの設備投資を数年以内に回収しようとすると、より大きなCOPが求められる。近年は3.5か4以上のCOPを要求する顧客が多く、およそ50度差以下の温度リフトでの利用に制限されている状況にある。

日本の二次エネルギー価格比の推移

2000年代後半から2013年頃まで、日本の二次エネルギー価格比は2.1程度であった。しかし、その後上昇し、2018年以降、3程度で推移している。

上昇した主な理由として2つが挙げられる。1つは東日本大震災を契機とした原子力発電所の長期停止であり、これに伴って比較的高コストな火力発電比率が増加したことである。

もう1つは、2012年から導入された再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の影響である。
再エネ賦課金は電気料金に上乗せされるため、再エネ支援に要する費用が、二次エネルギー価格比を押し上げる一因となっている。

二次エネルギー価格比の上昇が与えた影響

日本では世界に先駆けて2000年代後半から産業用ヒートポンプの商用化が進展し、2011年には175度までの蒸気供給が可能な高温ヒートポンプも製品化された。しかし、その後の二次エネルギー価格比の上昇によって、残念ながらこのような温度リフトの大きなヒートポンプの市場競争力は低下した。そのため、小さな温度リフトで適用可能な箇所を探し出しながら、導入が漸進している状況にある。

さらに、二次エネルギー価格比の上昇によって、温度リフトの大きな高温ヒートポンプを開発する意欲の低下につながった。海外で高温ヒートポンプの技術開発や商用化が活発化する中、日本ではこの十数年間新たな高温ヒートポンプは商用化されなかった。

二次エネルギー価格比低減に向けて

二次エネルギー価格比が高い状態では、燃料に依存したエネルギー消費行動は改善されない。この価格比を低減させることは、エネルギー需要家の行動を変容させることにつながるため、電化による脱炭素化やエネルギー安全保障の強化、技術開発力の維持・向上にとって重要である。

次回、欧州における二次エネルギー価格比低減策を紹介し、日本への応用可能性を考えたい。

著者

甲斐田 武延/かいだ たけのぶ
電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 上席研究員
2011年度入所、専門は熱工学、博士(工学)。

電気新聞 2026年9月30日掲載

※発行元の一般社団法人 日本電気協会新聞部(電気新聞)の許可を得て、寄稿内容についてご紹介します。

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