電力中央研究所

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日刊工業新聞 確かな価値の創出に向けて 挑む電中研

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研①
電力中央研究所の使命

エネルギー変革 先導 “理想の日本”に技術で貢献

 電力中央研究所(電中研)は、1951年に創設された科学技術研究を通じて電気事業と社会に貢献する電気事業共同の研究機関であり、創設以来、わが国の経済社会の発展を支える電気事業に研究開発の面から寄与している。電気や土木・建築、機械、化学、生物、原子力、環境、情報・通信、経済・社会など自然科学から社会科学まで幅広い専門性を有する研究者が在籍し、分野横断的に総合力を発揮すること、また、広く国内外の関係機関と連携を図ることなどにより、直面する課題や中長期の課題の解決に向けた研究に取り組んでいる。

 電中研は2024年6月に、急速に変化する社会情勢を踏まえ、エネルギーシステムの変革を先導すべく、中期経営計画を策定した。同計画において、50年に日本がありたい姿として「サステナブルなエネルギーで支える安全で豊かな社会」を設定し、その実現に向けた「7つの目標」を定め、この目標に向けて電中研が取り組む「2035年に向けた研究開発の道筋」を示している。

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 同計画などを踏まえ、50年に向けて研究の方向性シフトを進めている。特に30年を目標年として強化・加速すべき研究を「2030年戦略研究」と位置付けて推進し、課題解決のカギとなる革新的な技術の創出に取り組んでいる。24年度は、再生可能エネルギー大量導入により懸念される系統慣性の低下に対してエリアごとの慣性をリアルタイムで推定する手法や、バイオマスから液体アンモニアを使って有用成分を抽出する技術などを開発した。

 また、電気事業が直面する課題や長期かつ広範な社会課題の解決に向けて、原子力発電、火力発電、水力発電、再生可能エネルギー、電力流通、需要家サービス、環境、社会経済、共通・分野横断の9分野別の研究や国などからの受託研究を推進し、着実に成果を上げている。

 創出成果は、社会実装に向けて、電気事業に係る規格・基準・技術指針への反映や現場適用に積極的に取り組んでいる。

 25年は電中研創設者松永安左ェ門の生誕150年に当たる。電中研は松永翁の理念「産業研究は知徳の練磨であり、もって社会に貢献すべきである」を受け継ぎ、確かな価値の創出を通じて、電気事業と社会に貢献し続ける。

 次回以降、電中研の研究成果などについて、担当研究者が紹介していく。

 

※7つの目標、2035年に向けた研究開発の道筋は、中期経営計画(2024年度版)、2030年戦略研究および分野別の研究、成果の還元・社会実装の詳細は、Annual Report 2024を参照。

 

日刊工業新聞(2025年10月2日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

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