
セメント・コンクリート産業では、環境負荷の低減を目的として近年二酸化炭素(CO2)排出量を抑制した素材、製品が数多く開発、提案され、その一部は実用化されている。そして、2010年ごろから主に米国で、コンクリートおよびコンクリート廃材に含まれるカルシウム源にCO2を固定させることで大気中および排ガス中のCO2を直接的に削減する技術が提案され、実用化されてきた。
わが国でもCO2回収、固定したCO2を有効利用する技術開発が多くの研究機関で進められてきた。その中で電力中央研究所(電中研)は2022年度から総合建設会社である安藤ハザマが主体となる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「CO2を高度利用したCARBON POOL(以下、CP)コンクリートの開発と舗装および構造物への実装」のコンソーシアムの一員として参画し、CO2固定量評価手法の開発、CP材料およびCPコンクリートの品質評価と品質管理手法の開発、そして、ライフサイクルを通してのCO2収支とコスト収支を統合的に評価する手法の開発を進めている。
CPコンクリートは、CO2固定量を最大で160kg/m3程度まで高めることができるだけではなく、CP骨材などの材料の組み合わせおよびコンクリート製造時の品質管理手法に留意することで従来のコンクリートと同等の強度および性能を担保させることができる。
また、同コンソーシアム内では、発電所排ガスなどのCO2発生源とCO2固定方法の組み合わせを含めたCP材料製造方法およびそれらのCP材料を用いたコンクリートにさらにCO2を固定させたCPコンクリートの製造方法に関して試行錯誤を重ねてきており、現在では中規模の実証プラントを用いた実規模資材の製造が行われている。
2025年4月から10月にかけて開催された大阪・関西万博では、「未来の都市」パビリオンで道路の一部、パビリオンの床板の一部、ベンチにCPコンクリートを活用して実証実験を行ったほか、2025年3月にオープンしたたねやの店舗LAGO大津(大津市)でも駐車場や遊歩道にCPコンクリートと普通コンクリートを同時に敷設して実証実験が行われている。同プロジェクトでは、2031年以降の量産化および社会実装を目指しており、道路の舗装や建物への利用が想定されている。
電中研は今後、CPコンクリートの社会実装に向けてライフサイクル全体を通したCO2固定量、環境負荷とコストの収支を統合的に評価する手法などの開発とその信頼性向上に取り組む。
大阪・関西万博会場の「未来の都市」パビリオンに設置されたCPコンクリート製ベンチ
日刊工業新聞(2026年4月16日)掲載
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